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お葬式コラム
初七日法要後の食事。「精進おとし」とはどんなもの?
お葬式にまつわる食事には「通夜ぶるまい」と「精進おとし」があります。通夜ぶるまいは通夜式後に弔問客をもてなす場ですが、精進おとしは初七日後に親族を中心とした故人と親しい人たちで会食することをいいます。では、なぜそのタイミングで食事をするのか、ご存知でしょうか。今回は、精進おとしの意味や役割、さらには招かれたときのマナーなどを詳しくご紹介します。
精進落としの意味や役割は変わってきています。
仏教の考えでは、人の魂は亡くなって四十九日までは地上界と天上界をさまよい、その間に来世の行き先を決める裁判を受けます。裁判は7日ごとに7回行われるため、残された者たちは故人によい裁きが下るよう7日ごとの忌日に“善を送る=追善供養”をします。そのなかでも、最初の裁判が行われる初七日と最終判決が下される四十九日は大切な忌日なので、僧侶による読経をお願いして法要を営むのです。
その初七日法要のあとに親族などで会食することを「精進おとし」といい、「精進明け」「精進上げ」と呼ばれることもあります。
精進おとしはもともと、裁判で故人によい裁きが下るよう肉や魚などを絶つ精進をつづけていた近親者が、四十九日で最後の裁判を終えた忌明けに通常の食事に戻すことをさしていました。
しかし時代とともに考え方は変化しています。身内が亡くなって肉や魚を食べない精進をする方はほとんどいなくなり、精進おとしも本来の意味が薄れていきました。近年では、初七日法要後に喪主やご家族が僧侶などお葬式でお世話になったみなさんへ、感謝の気持ちを伝えるために食事でもてなすという宴席の役割が大きくなっています。
「お斎」と「精進おとし」は違うの?
精進おとしの席を「お斎(おとき)」と呼ぶことがあります。また、精進おとしを食べる場所を「お斎室」という葬儀社もあるそう。
お斎とはお葬式や法事のときに開く食事の席のこと全般をさし、精進おとしはそのなかのひとつにあたります。そのため、精進おとしをお斎としても変わりはないのです。
とはいえ、精進おとしには本来、“精進を明ける”という意味があります。お斎のなかでも特別な食事だとして「精進おとし」といわれるようになったので、この呼名が使われることが多いようです。
誰を招いて、どんな料理を出せばいい? 精進おとしの準備について。
精進おとしは、お葬式でお世話になった方々のおもてなしをする場なので喪主側が準備します。お葬式だけでも大変なのに初七日まで…と負担に感じる方もいるかもしれませんが、最近はお葬式の当日に初七日法要を行うことがほとんど。お葬式から精進おとしまでのサポートを依頼すれば、多くの葬儀社が対応してくれます。
しかしながら、自分たちの意向をもっていないと納得できるものが実現できない場合もあります。精進おとしに必要なことを把握したうえで、葬儀社に相談するといいでしょう。
精進おとしはいつ行うもの?
昔は四十九日の忌明けとして精進おとしをしていましたが、近年は初七日法要後に行うのが一般的。なにかと忙しい現代社会では、仕事や学校などの関係で7日目に再び集まるのが困難になっています。そのため、火葬後に初七日をすまし、つづいて精進おとしをするご家族が多くなっています。また、火葬を待つ間にお弁当などで簡単な食事をし、これを精進おとしとするケースもあるようです。
ともあれ、お葬式当日の最後の儀式となる精進おとしは、故人が亡くなってからの供養の節目。無事に終えることで、ご家族は一息つけることでしょう。
誰を招待すればいいの?
精進おとしには、お葬式でお世話になった人たちをご招待します。まずは読経いただいた僧侶、手伝ってもらった世話役を誘いましょう。そのほかは、火葬に参列した親族が参加します。
また、親族以外の友人・知人でも故人ととくに親しかった方などは、最後まで故人を見送ってもらいたいとご家族から火葬場への同行を願うことがあります。そのような方々にもお声がけし、精進おとしでおもてなしください。
どのタイミングでご招待するの?
精進おとしは、個別のお膳やお弁当で料理をふるまうことがほとんど。そのため、事前に参加人数を把握しておく必要があります。料理の準備もあるので、出席の有無はなるべく早めに確認しておきたいものです。たとえば、通夜式や通夜ぶるまいの席で火葬と初七日法要の参列、精進おとしへの参加を依頼し、意向を聞いておくといいでしょう。
そして、精進おとしは喪主側が接待するものです。招かれない人は参加できないため、声をかけられていない人が「参加したい」と申し出るのは控えてください。
参加を断られた場合は?
喪主側から精進おとしへの参加をお願いしても、都合がつかないなどでお断りされることもあります。その場合は無理強いせず、忙しいなか通夜式や葬儀・告別式に参列いただいたお礼を述べましょう。
また、僧侶が精進おとしに同席できない場合は「御膳料」と「お車代」をお渡しし、返礼品や供物をわけた袋も持ち帰ってもらいます。御膳料の相場は、5,000円〜10,000円程度。お渡しするときは、丁寧にお礼を伝えするのもお忘れなく。
精進おとしを省いてはダメ?
精進落しは、必ずしなくてはいけないものではありません。しかし、精進おとしにはお葬式でお世話になったみなさんに感謝を伝える役割もあるため、それをしないのは失礼にあたり、マナー違反にもつながります。たとえ身内しか参列しない家族葬であっても、僧侶を招いて精進おとしをするのは礼儀です。
とはいっても、地域によっては精進おとしそのものの風習がないところもあります。その場合でも、持ち帰り用の折り詰め料理や御膳料をお渡ししているようです。
イマドキの精進おとしで食べられている料理。
精進おとしでは、動物性の食品を使わない「精進料理」を食べるイメージをもっている方も多いのではないでしょうか。確かに昔は精進料理をいただいていましたが、現在ではこだわりが薄れてお肉や魚もメニューに加わっています。とくに近年は料理内容に関しては自由度が増しており、ジャンルも定番のお寿司や懐石膳から洋風・中華風まで多様なものが選ばれています。精進おとしは、お葬式でお世話になった方を労う意味もあるので、見栄えのする華やかな食事を用意する傾向もあるようです。
また、通夜ぶるまいと違い、精進落しの料理は個別に用意するのが一般的。人数分のお膳や弁当を準備しておけば、急に都合が悪くなり参加できない人がいてもお持ち帰りいただくことができます。
精進おとしの料理で気をつけることは?
メニューに決まりごとがないといっても、精進おとしは弔事の席です。慶事で食べられているような鯛や伊勢海老など、おめでたい料理は避けたほうが無難。お店によっては“精進おとし用メニュー”を用意しているので、そのなかから選べば間違いありません。
また、精進おとしの料理は、幅広い年齢の方が口にするもの。年代を問わずに食べやすい料理をチョイスすることも心がけましょう。小さな方にはお子さま向けの料理を用意すると喜ばれます。また、お誘いするときにアレルギーの有無も確認し、安心して食べられる料理を準備する配慮も必要です。
料理はどこに頼んだらいい? 相場はあるの?
精進おとしは、初七日法要後に場所を設けて行うのがほとんど。そのため、仕出し料理屋などにオーダーし、精進おとしに適したお膳を用意してもらうことが多いようです。料理の依頼は仕出し料理屋に直接連絡するほか、葬儀社を通して希望の料理を準備してもらう方法があります。
もちろん会場以外で精進おとしをすることもでき、ご自宅や寺院、料亭などでも行えます。料理の相場としては、おひとりにつき3,000円〜8,000円程度。主流としては、4,000円〜5,000円のようです。
精進おとしのマナー。ここに注意して!
精進おとしに、厳格な決まりごとがあるわけではありません。お葬式の労をねぎらい、お世話になった方々においしい料理をふるまってリラックスしてもらいましょう。
とはいえ、ハメを外して周囲を不快にさせては台なし。精進おとしではお酒もふるまわれるため、つい失礼な言動をとってしまうこともあります。招く側も、招かれる側もマナーを守って、みんなが気持ちのいい精進おとしを執り行いましょう。
席次に気を配る
精進おとしで気をつけたいのが席次です。お世話になった方々を上座にし、接待する側が下座にいるのがマナー。具体的には、最上席に僧侶、次いで世話役、会社関係者、友人・知人、親族とつづき、ご家族は末席に座ります。主催者である喪主は気を配りながら動き回る必要があるため、入り口付近の席にしましょう。
出席を確認している精進おとしは、誰が参加するのかあらかじめわかっています。喪主は事前に席の配列を決め、席次表も作成して参加者を案内しましょう。席に参列者の名札を置いておくと、さらに親切です。
献杯を終えるまで料理に手をつけない
普段の宴会では乾杯をして会をはじめますが、精進おとしでは「献杯」で故人に杯を捧げて敬意を表します。献杯は乾杯のように杯を高く上げたり、杯同士を打ち合わせたりしません。大きい声で「献杯!」という、献杯後に拍手をする、といのもマナー違反。献杯の唱和は静かに行いましょう。音頭は、喪主または故人がお世話になった会社の上司、年長者の親族がいる場合はお願いするといいでしょう。
また、精進落としでは、まず位牌の前にお酒の入った盃を置いて喪主があいさつし、献杯へとつづきます。献杯が宴席のスタートを告げるので、参加者は献杯が終わるまで料理に手をつけてはいけません。
お酒を飲んでハメをはずさない
精進おとしでは、料理とともにお酒もふるまわれます。飲んで親睦を深めるのはなんら問題ないのですが、盛り上がり過ぎて場の空気を乱してはいけません。大声でおしゃべりしたり、大きな笑い声を立てたりするのは控えましょう。もちろん、車を運転する人など飲酒できない人にお酒をすすめるのも厳禁です。
故人の思い出話をし、死に関することは口にしない
精進おとしでの話題は、故人の思い出を中心にしましょう。参加者それぞれが故人とのクスッと笑えるエピソードや心に残っている言葉などを披露しあえば、あたたかい雰囲気になります。
しかし、故人の話題であっても、死に関連することを口にするのはタブー。亡くなったときの様子を尋ねるなどは、ご家族の悲しみを刺激することにもつながります。また、お悔やみを改めていう必要もありません。
とはいえ、喪主やご家族は悲しい気持ちをもちながらお葬式を執り行い、とても疲れています。励ましや労りの言葉をかけることは大切な心遣いなのではないでしょうか。
精進おとしの流れと、喪主のあいさつ例。
精進落としはどのように進行するのでしょうか?一般的な流れをご紹介します。
精進おとしの流れ
参加者全員が席についたら、精進おとしをはじめます。
〈1〉喪主からお礼のあいさつ
〈2〉献杯
〈3〉宴席の開始
〈4〉喪主から終了のあいさつ
最初のあいさつでは喪主から参加者にお礼の言葉を述べ、あわせてお葬式が無事に終えられたことを報告。宴席では喪主が酌をして回り、一人ずつに感謝の意を伝えていきます。
会食時間は1時間〜2時間が目安。頃合いをみて喪主が手短なあいさつをし、お開きにします。宴席の途中で帰る方がいるなら、喪主はその場を離れてあいさつに行き、お礼の言葉とともに返礼品や供物をわけた袋を渡しましょう。
精進おとしでの喪主のあいさつ
親族のみで行うことがほとんどの精進おとしでは、お葬式を終えられたことの報告や感謝の気持ちを形式張らずに伝えましょう。
●開始時のあいさつ(例)
本日は誠にありがとうございます。
お世話いただいたみなさまのおかげで、葬儀一切をつつがなく終えることができました。
改めて、厚く御礼を申し上げます。
心ばかりのお食事を用意いたしましたので、ごゆっくりお召し上がりください。
本日はありがとうございました。
●お開きでのあいさつ(例)
最後までおつきあいいただきまして、本当にありがとうございます。
お名残惜しいのですが、みなさまお疲れかと思いますのでこのあたりで終わらせていただきます。
今後とも故人の生前と変わらぬおつきあいをよろしくお願いいたします。
2日間にわたり、誠にありがとうございました。
どうぞお気をつけてお帰りください。
これらはあくまで例文。あいさつでは喪主ご自身の気持ちを、いつわりのない素直な言葉でお話するのが重要です。喪主の心がこもったものであれば、すべての参列者にしっかり届くことでしょう。