葬儀社がやってくれること、喪主がやること。
お葬式コラム
いろいろあるお葬式の会場。どこを選べばいい?
お葬式は、“どこで行うのか”というのも大きな要素。以前はご自宅や菩提寺ですることが多かったのですが、現在はお葬式のための会場を借りるのが主流です。しかし、ほとんどの人は葬儀場に詳しくないため、葬儀社にすすめられたところを選んでいるのではないでしょうか。最近は会場のバリエーションが増え、それぞれに特徴をもっています。吟味して、自分たちのお葬式にふさわしいところをお選びください。
お葬式はどこで行ってもいいの?
通夜式やお葬式を執り行う会場は、「斎場」「葬儀場」「葬式場」などと呼ばれます。呼び名は違いますが、基本的な意味は同じで“お葬式の会場”ということ。ご自宅でお葬式をする場合は、ご自宅が葬儀場になります。とはいえ、近年は自宅葬がめっきり減っているため、“斎場・葬儀場=お葬式を行うために借りる会場”との認識が広がっているようです。
ところで、お葬式はどこで行ってもいいのでしょうか? 日本の「墓地、埋葬に関する法律」にはさまざまなことが定められていますが、実はお葬式に関する項目はありません。法的な制約がないので、地域や会場は自由に選んでOK。故人やご家族が望むところでお葬式を執り行なえばいいのです。
多くの人が選ぶお葬式会場「斎場」には、公営と民営があります。
お葬式を執り行える会場には斎場、葬儀場、葬式場という名称があると前述しましたが、そのなかでも「斎場」と呼ばれる場合が多くなっています。
斎場の「斎」という文字は「いつき」と読み、神道に由来したもの。“食事や行動を律して神に仕える”という意味をもっています。斎を行う場所というので斎場と呼ばれ、もともとは葬儀以外の儀式や祭祀(さいし)も行われていました。そのため、「祭場」とも書きます。
現代の日本で斎場といえば、お葬式を行える施設を指すのが一般的。そして、現代の斎場は「公営」と「民営」の2つのタイプにわかれ、それぞれにメリット・デメリットがあります。
公営斎場
公営斎場は市町村など自治体やいくつかの自治体が集まった組合で運営している公共施設。市が運営していたら「市営斎場」、町なら「町営斎場」と呼ばれます。また、「○○聖苑」という名称も多くみられます。
●メリット
・民営斎場より利用料金が安い。
・火葬場が併設されているところが多く、通夜式から火葬までスムーズに行える。
・火葬場が併設されている場合は、出棺時の車両の手配が要らない。
・宗教や宗派、葬儀社を問わずに利用できる。
●デメリット
・人気が高く、希望日に予約が取れない場合がある。
・故人や喪主の住所地でないと利用条件が変わるところがある。
・使用方法に制限があり、思いどおりの演出ができない可能性がある。
・郊外にあり、交通アクセスがよくない施設も多い。
●利用料金の相場:50,000円〜100,000円程度
民営斎場
葬儀社や宗教法人が所有・運営している民間施設。そのほかの企業が貸斎場として管理・運営しているケースもあります。
名称として、斎場以外に「ホール」「会館」「式場」を使用する施設が多く、「○○メモリアルホール」「○○会館」と呼ばれるところは民営斎場と判断していいでしょう。
●メリット
・施設が豪華で、設備も充実しているところが多い。
・音楽や装飾などの演出も臨機応変に対応してもらいやすい。
・葬儀社が運営または提携しているので、希望日に予約が取りやすい。
・便利な場所にあり、交通アクセスのいい施設が多い。
●デメリット
・公営斎場より、利用料金が高い。
・斎場を運営している葬儀社以外を選べない。
・宗教法人が運営している場合は、宗教的な制限がある。
●利用料金の目安:100,000円〜200,000円程度
斎場と火葬場は違う?
公営斎場は火葬場を併設しているケースが多いためか、斎場と火葬場を混同している方がいらっしゃいます。斎場はお葬式を行う会場で、火葬場はご遺体を火葬するところ。基本的に異なる意味をもっているのですが、近年は火葬場のみでも「○○斎場」と呼ぶ施設があるようです。斎場と火葬場の線引きが曖昧になっているため、“火葬場=斎場”という認識も間違っていないのかもしれません。
そのほかの会場には、どんなところがあるの?
お葬式のスタイルが多様になった現代は、公営・民営の斎場以外にもお葬式を執り行える会場が増えています。いくつかあるタイプから代表的なものをピックアップし、特徴やメリットやデメリットをご紹介しましょう。
菩提寺などの寺院
菩提寺などの寺院のなかには、お葬式を行えるところもあります。寺院で営むお葬式は「寺院葬」と呼ばれ、格式のある雰囲気のなかで静かに故人を弔えます。
また、寺院葬には“寺院を会場としてお葬式の運営は葬儀社がするもの”、“会場だけでなくお葬式自体も寺院が主体となるもの”といったパターンがあります。
●メリット
・寺院という格式のある場所でお葬式を営める。
・菩提寺などなじみのある寺院で故人を送れる。
・菩提寺が近くであれば、近所の人も参列しやすい。
●デメリット
・檀家や信徒でないと利用できない場合が多い。
・設備が整っておらず、希望の演出ができないこともある。
公民館や集会所など
町内会などの自治体が運営している公民館や集会所、居住している集合住宅の共有スペースが葬儀会場として使用できることもあります。誰もが当てはまるわけではありませんが、条件があえば安価で借りられることも多いので利用できる施設があるのかを事前に調べておいてもいいでしょう。
●メリット
・利用料金が安い。
・自宅の近くでお葬式ができる。
・近所の人が参列しやすい。
●デメリット
・居住者のみなどの条件があり、誰でも利用できない。
・お葬式用の会場でないため、利便性が低い。
ホテル
最近はホテルを会場にしたお葬式も増えています。「ホテル葬」とも呼ばれ、高級感のある会場でセレモニーやパーティーのように行われるのが特徴。また、ほとんどのホテルはご遺体の持ち込みや焼香を禁止しているので、火葬を先にする骨葬や密葬後のお別れ会として利用されることが多いようです。
●メリット
・施設が豪華で設備も整っている。
・交通アクセスがよく、参列者が足を運びやすい。
・遠方から来る参列者が宿泊できる。
・レストランがあり、好みの料理を選べる。
●デメリット
・利用料金が高額になるケースが多い。
・ご遺体を持ち込めず、一般的なお葬式ができない。
・一般客の焼香や線香を禁止にしているところがある。
ご自宅
かつては主流だったご自宅でのお葬式を選ばれる方もいます。住み慣れた我が家から旅立ちたいと願う故人や、いつもと変わらない場所から故人を見送りたいご家族の想いをカタチにできるのが自宅葬の魅力。お棺を安置して祭壇を飾るスペースがあるなどの条件をクリアできるなら、ご自宅でのお葬式を考えてもいいでしょう。
●メリット
・会場の料金がかからない。
・利用条件がなく、時間の制約がない。
・慣れた場所で、落ち着いてお葬式を行える。
●デメリット
・お棺や祭壇のスペースをつくるなど、準備が必要。
・不特定多数の人がご自宅に出入りする。
・交通アクセスが悪く、駐車場を確保できない。
・近隣の人に迷惑がかかることがある。
選び方のポイント。どうやって選べばいいの?
近年はお葬式を行えるところが増えており、大小を入れるとかなりの数になります。そのなかから、自分たちのお葬式にふさわしい会場をどう選べばいいのか? 考慮すべきポイントをいくつかご紹介します。
お葬式のスタイルや規模に適しているか
親族だけの小規模な家族葬であれば大きな会場は必要ありません。小さなところでいいでしょう。一方で、多くの方が参列する一般葬であれば広い施設でないと収容できません。規模に適していない会場でお葬式をすると、さみしい雰囲気になってしまったり、ギュウギュウで窮屈な印象になったりもします。まずは、自分たちが執り行うお葬式はどのようなスタイルになるのか、参列者は何人くらいなのかなどを決め、それに適した会場を選びましょう。
利用料金は予算内か
施設の料金はさまざまです。公営斎場なら安くあがりますが、設備の整った民営斎場やホテルなどは料金が高くなります。会場の料金はトータルの葬儀費用に大きく影響し、予算オーバーにもつながります。お金がすべてではありませんが、高額な料金はご家族の負担になるため、できる限り予算内に納められる会場のチョイスをおすすめします。
希望のお葬式を実現できる設備が整っているか
最近は自由なスタイルのお葬式も増えています。例えば、故人が好きだった音楽を流したり、思い出の品々を飾るコーナーを設置したりすることを考えている人もいるでしょう。そのような演出は設備がないとできません。かなえたいお葬式があるなら、会場に実現できる設備が整っているのかを確認する必要があります。
また、参列者に年配の方が多いのであれば、負担を減らせるようバリアフリーに対応した施設であることも大切です。
ご遺体の安置や宿泊が可能か
多くの施設には通夜式や葬儀・告別式までご遺体を安置できる場所が整っているのですが、設備されていないところもあります。その場合は、どこでご遺体を安置するのかを葬儀会社と相談して決めます。ご遺体を安置できても、面会時間が限られている施設もあるので確認しておきしょう。
また、宿泊施設のある葬儀場も存在します。お葬式まで故人といっしょに過ごしたいと願うご家族には、こちらのタイプがおすすめです。
交通アクセスのよさや駐車場の有無
宿泊できる施設で寝泊まりしない限りは、ご自宅から会場に通うことになります。行き来の負担を減らすためにも、ご自宅からのアクセスのよさはとても重要。施設に火葬場が併設されていない場合は、葬儀・告別式をする会場から火葬場までの距離も調べておくといいでしょう。距離があると出棺の時間が早まったり、移動のための車両費がかさんでしまったりすることがあります。
加えて、交通機関の利便性や駐車場の有無もチェック。多くの方がスムーズに来られるよう配慮しておきたいものです。
会場は事前に確認するのをおすすめします。
お葬式の会場を選ぶ基準はたくさんありますが、もっとも信用できる選択ポイントは“ご自身で実際に確かめること”。事前準備として会場の情報を集め、気になるところは現地に足を運んでの内見をおすすめします。
実際に訪れてみると、外観・内装の雰囲気、スタッフの対応などインターネットサイトやパンフレットを見ただけでは伝わらない部分を肌で体感できます。お葬式を営む会場だけでなく、ご家族が長い時間を過ごす控室の設備もチェックを忘れずに。
交通アクセスの確認では最寄り駅とそこからの歩いたときにかかる時間、タクシーを使った場合の料金の目安などがわかると便利。駐車場から入り口までの距離など、施設内での動線のスムーズさやバリアフリーであることなども確認しておくと安心です。