お葬式コラム

ご遺体の安置。場所や方法は?

逝去からお葬式までの間、ご遺体を保管しておく必要があります。これを「安置」といいます。病院で亡くなった場合、霊安室などで一時的にご遺体を預かってくれますが、長時間はむずかしいため、安置場所に搬送しなくてはいけません。搬送までの限られた時間で、安置場所を決めなくてはいけないのです。いざというときに適切な選択ができるよう、安置についても知っておくといいでしょう。

なぜ、ご遺体を安置しなくてはいけないの?

逝去からお葬式を行うまで、ご遺体を決められた場所で保管することを「安置」と呼びます。病院で亡くなった場合、ご遺体は院内の霊安室に移されますが、保管は一時的なもの。すみやかに指定した安置場所へ移動しなくてはいけません。そのため、安置場所の選択には時間をとれないのが現状。大切なご遺体を不本意なところに安置してしまわないよう、自分たちが希望する安置場所を事前に考えておくといいでしょう。
ところで、なぜご遺体の安置が必要なのかご存知ですか? これは法律にも関係しています。日本の「墓地、埋葬等に関する法律」では〈亡くなってから24時間以内の火葬〉を禁じており、最低でも24時間を経過しないと火葬できません。昔は死亡宣告を受けても蘇生する人がいたため、ご遺体を一定期間保管し、死亡を完全に確認してから火葬することを定めたのです。
医療が発達した現代では死亡確認したご遺体からの蘇生はありませんが、いまもこのルールに則っています。そのため、通夜式やお葬式をしない「直葬(火葬式)」でも、24時間以上の安置が必要なのです。

安置する期間は決められているの?

法律で24時間以内の火葬が禁じられているため、安置の最短期間は〈死亡から24時間〉。この期間を超えれば、いつまで安置してもかまいません。とはいえ、ご遺体を長々と置いておけないので、2〜3日程度の安置が一般的なようです。
また、安置期間は状況によっても変わります。火葬場が混雑していたり、ご家族の事情があったりしてお葬式の日程を遅らせる場合は、安置期間が長くなるようです。 長期間の安置で心配になるのが、ご遺体の状態の維持。長期保存するときは、ご遺体を殺菌・消毒して防腐処理を行うことで生前のような姿をキープできる「エンバーミング」を施しておくと安心です。

安置への流れと、安置期間にやること。

近年は病院で亡くなる方がほとんど。病院で逝去された場合の大まかな流れと、安置期間にやることをご紹介しましょう。

葬儀社へ連絡し、ご遺体の搬送車を手配する

基本的に、ご遺体の搬送は葬儀社が担当します。お葬式の運営をまかせる葬儀社を決定し、そこへ連絡してご遺体の搬送を依頼しましょう。葬儀社がすぐに決められない場合は、病院に紹介された葬儀社に〈ご遺体の搬送だけ〉を頼み、安置後に落ち着いて葬儀社を選ぶこともできます。

安置場所を決定し、ご遺体を搬送する

ご家族や葬儀社と話し合い、安置場所を決定します。主な安置場所は「ご自宅」「斎場・葬儀場」「民間の施設」です。それぞれに特徴があるので、比較・検討して選びましょう。(安置場所については次の章で詳しくご説明します)
安置するところが決まったら、病院に迎えにきた葬儀社の車両でご遺体を搬送します。

葬儀社とお葬式の打ち合わせをする

ご遺体の安置を終えたら、葬儀社とお葬式の内容を話し合います。お葬式の日時や会場、希望する形式、参列者数などの大枠から、料理や返礼品など細かいところまで決めていきます。
葬儀社の担当者はお葬式のプロ。わからないことはなんでも質問し、解決しておきましょう。料金についても詳細な確認をおすすめします。

親族など関係者に連絡

お葬式の内容が決まったら、親族や友人・知人など関係者に連絡を。たくさんいる場合は、手分けをするといいでしょう。連絡漏れがないよう事前にリストをつくっておくと、参列してほしい人へ確実に連絡できます。近親者など通夜式の前に故人と対面させたい人には、安置場所もお伝えください。
連絡方法は電話が一般的ですが、近年はメールやSNSを活用する方も多いようです。

菩提寺に連絡

お葬式では菩提寺の僧侶に読経をお願いします。菩提寺へ連絡し、まずは僧侶のスケジュールを確認。お葬式の日程などを相談して決定しましょう。納棺の前に安置場所で「枕経」をあげてもらいたいときは、このタイミングでお願いします。
菩提寺がなかったり、わらかなかったりする場合は葬儀社が僧侶を手配してくれるので、担当者に相談するといいでしょう。

安置場所の種類。メリット、デメリット。

ご遺体を安置する場所の種類は、大きくわけて3つ。それぞれにメリット・デメリットがあるので、それらを踏まえて選択してください。

ご自宅

昔は自宅葬が多かったので、ご遺体の安置もご自宅が主流でした。近年は斎場などの会場でのお葬式が増えたことや、ご遺体を安置するスペースを確保できないなどの住宅事情もあって、ご自宅での安置は減っているようです。
ご自宅安置では、ご遺体は基本的に仏壇のあるお部屋に安置します。仏壇がないご家庭では座敷など畳のある部屋か、生前に故人が暮らしていた部屋でもいいでしょう。
大切なのは、室温を低く設定すること。ご遺体の状態を良好に保てるようエアコンなどを活用して室温を18度以下にキープします。また、ご遺体をスムーズに搬入するための経路の確保も必要です。

メリット: 安置場所のための費用がかからないは大きなメリット。住み慣れた場所で、故人との最期の時間をゆっくり過ごせるのも魅力です。また、病院などご自宅以外で亡くなった場合は、“故人を自宅で休ませてあげたい”というご家族の願いもかなえられます。

デメリット: ご遺体の安置には、宗教・宗派によってさまざまな作法があります。枕飾りなどの設えは葬儀社がしてくれますが、ご遺体を迎えるためにはそれなりの準備が必要です。さらに、お葬式を自宅以外で行うのであれば、ご遺体を会場まで搬送する費用も発生します。

斎場や葬儀場

お葬式を営む斎場や葬儀場には、ご遺体を安置できる設備も整っています。近年は、ほとんどの方がご自宅以外でお葬式をするため、安置からお葬式までスムーズにご遺体を移動できるこちらの利用が増えているようです。

メリット: ご遺体安置を目的とした施設なので空調管理が整い、ご遺体の状態を良好にキープできます。宗教・宗派の作法にそった安置の対応も万全。ご遺体の搬送から安置、管理まですべてを葬儀社にまかせられるので、喪主やご家族の負担はかなり軽くなります。また、不幸があったことをご近所に知られないので、身内だけで家族葬を行いたい方にも適しています。

デメリット: 安置所の使用料が発生。定額プランに含まれている場合でも、火葬場の混雑状況などで安置期間が長くなると追加料金がかかります。また、施設によっては面会ができなかったり、面会時間に制限があったりするので、故人との最期の時間をゆっくり過ごせない場合もあります。

民間の安置施設

最近は、ご遺体の安置だけを目的としている民間の専用施設が増加。見た目が通常のホテルのような「遺体ホテル」も登場しています。お葬式を行わない「直葬(火葬式)」では斎場や葬儀場の安置所を使用できないケースもあるようです。かといって、ご自宅でもご遺体の安置がむずかしい。そのような方は専用の民間施設を利用しているようです。また、葬儀社を落ち着いて選ぶため、一時的にご遺体を安置する方もいらっしゃいます。

メリット: 365日24時間営業をしている施設が多く、ご家族の面会や弔問客の訪問も自由に行なえるようです。故人といっしょにゆっくり過ごしたい方には適しています。
保冷設備が整っている施設であれば、ご遺体の管理を安心してまかせられます。

デメリット: 民間の安置所なので利用料が必要。期間が長くなると高額を請求され、ご遺体の搬送費用もかかります。設備が整っていない施設では、長期間は預けられないので確認が必要です。

施設での安置方法。お預かり安置と付き添い安置。

ご自宅以外の施設でご遺体を安置する場合、「お預かり安置」「付き添う安置」のどちらを希望するのか質問されます。それぞれの特徴をご説明します。

お預かり安置

ご遺体を斎場などの施設でお葬式までお預かりし、安置する方法。ご家族が付き添わず、ご遺体は施設が管理するため、安置期間中は故人と対面できません。
ご家族の負担は軽減できますが、故人と面会できず、弔問客の受け入れも不可。最期の時間を故人といっしょに過ごしたい方には不向きです。

付き添い安置

宿泊できる施設にご遺体を安置し、ご家族がお葬式まで付き添える方法です。ご遺体の状態をキープするなどのケアは安置所のスタッフにまかせられるので、ご家族は負担なく故人のそばでゆっくり過ごせます。
ただし、付き添い安置ができない施設も多いので、対応しているのかを確認する必要があります。

安置場所での面会のマナーと注意点。

許可されている安置場所では、ご遺体との面会が可能。とはいえ、誰でも面会できるわけではなく、ほとんどの場合は身内など故人と縁の深い方だけが行います。

安置場所は、お葬式までご遺体を安置している大切な場所。マナーを守って、面会しましょう。

面会が可能か、必ず確認する

安置している間、喪主やご家族は通夜式やお葬式の準備で忙しくしています。ご家族が安置場所にいつでもいるわけではないし、面会時間を設定している施設もあります。面会にうかがうときは事前に連絡し、面会できるのかを確認。可能であれば、都合のいい時間帯を尋ねましょう。喪主やご家族の都合にあわせるのは、最低限のマナー。指定された時間を厳守して面会します。

場に適した衣装を着る

ご遺体を安置しているのは神聖な場所。面会にうかがうときは、衣装にも気を配りましょう。お葬式ではないので、喪服ではなく普段着で問題ありませんが、きちんとした装いが大切です。黒などダークカラーの服を選び、男性ならビジネススーツ、女性であればスーツやワンピースなどがおすすめ。カジュアルなものや、派手な柄の入ったものを避け、アクセサリーやメイクは控えめに、結婚指輪はつけていてもOKです。
迷ったら、〈通夜式に参列するときの服装〉を想定して選べば問題ありません。

まずは、お悔やみの言葉を

安置場所に到着して喪主やご家族と対面したら、まずはお悔やみを伝えます。気を落とされているご家族を思いやり、心からお悔やみの言葉を述べましょう。
ご家族からすすめられたら、お礼を伝えて故人と対面します。
故人がお布団で安置されている場合は…

(1)故人の枕元に正座をし、両手をついて一礼
(2)ご家族が故人の顔にかかっている白い布を外す
(3)正座のまま対面。故人に一礼して合掌し、冥福を祈る
(4)故人から下がり、ご家族に一礼して終了

香典は持参しない

安置場所での面会に香典は持参しません。安置しているときは、亡くなってからあまり時間が経過していないので、香典をもっていくと死を想定して準備していたように受けとられます。マナー違反にもつながるので、香典は通夜式や葬儀・告別式へ参列したタイミングで渡します。ただし、お葬式に参列できない場合など特別な事情があるときは、喪主やご家族に説明して香典を渡してもいいでしょう。
気持ちとして何か持参したいときは、故人が生前に好んでいた菓子などをお供え物として準備。お悔やみの言葉を伝えるときに、手渡します。

佐々木 昌明ささき まさあき

佐々木 昌明ささき まさあき

葬祭現場にて実務経験を重ねた後、館長として25年以上の経験から儀式、法要など多岐にわたり終活や自分史をテーマにしたセミナー講師やパネルディスカッション等多くの活動を行う。
また、東日本大地震の際には現地へ赴き、被災地支援にも携わる。
●保有資格
・葬祭ディレクター技能審査制度(厚生労働省認定)
1級葬祭ディレクター
・一般財団法人冠婚葬祭文化振興財団認定 
上級グリーフケア士

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