お葬式の定額プラン。それだけで大丈夫?
お葬式コラム
お葬式で使う車。 「寝台車」と「霊柩車」の違いは?
お葬式の車といえば、「霊柩車」をイメージされる方が多いのでは。しかし、近年は「寝台車」で故人を搬送することが多くなっています。寝台車と霊柩車はどう違うのか? さらには、お葬式の車はどう手配すればいいのか? など、お葬式で使用する車両について意味や役割の違いなど詳しくお教えします。
病院から故人を運ぶのは「寝台車」。
「寝台車」とは、人を寝たまま運べるストレッチャーや担架を設置しているバン型車両のこと。病気やケガをした方など生きている人を運ぶためのものと、亡くなった方を搬送するためのものがあり、どちらも寝台車と呼ばれます。
近年、多くの方は病院で亡くなります。通常は病院で納棺できないためご遺体をご自宅や葬儀会場など安置する場所に移動させないといけません。また、安置所からお葬式を行う会場へも運ぶ必要があります。この搬送を担当するのが寝台車です。寝台車はストレッチャーを固定できるうえに付添人が同乗できるスペースも設けており、デリケートなご遺体を安心して運べます。
ちなみに、お金をもらってご遺体を運送するのは営業行為。業者の寝台車は貨物自動車運送事業法に基づいた許可を得て運用されています。許可を取得している寝台車は緑ナンバーなので、信頼してご利用ください。
寝台車の手配はどうすればいい? 故人を搬送する流れをご紹介。
故人が病院で臨終を迎えてから寝台車で搬送するまで、どうしても時間に追われてしまいます。事前にやることを知っておくと落ち着いて対応できるので、大まかな流れや押さえておきたいポイントをご紹介しておきます。
〈病院で亡くなった場合〉
葬儀社に連絡し、寝台車を手配する
故人を病院に長く留めておけないため、葬儀社に連絡して搬送をお願いしましょう。葬儀社のプランは搬送が含まれているものが多く、セットされていれば葬儀社が寝台車を手配してくれます。
葬儀社が事前に決まっていればそこに連絡し、決まっていなければ病院に紹介してもらうこともできます。とはいえ、葬儀社選びは大切。とりあえず “搬送だけ”を依頼し、あとからご家族で相談して決めてもいいでしょう。病院から紹介された葬儀社を断っても、失礼にあたりません。
到着した寝台車で故人を安置場所に運ぶ
ほとんどの葬儀社は、手配の依頼から1時間程度で病院に迎えが到着するようです。故人をストレッチャーにのせて寝台車のなかで動かないように固定するなどの搬送準備は、葬儀社の担当スタッフにまかせましょう。寝台車には1〜2名のご家族が同乗し、安置場所まで故人といっしょに移動します。病院をでるときには忘れ物がないか確認し、お世話になった医師や看護師にあいさつすることもお忘れなく。
ポイントは、事前の葬儀社選びと安置場所の決定
ご遺体搬送の手配は葬儀社にお願いするため、病院で亡くなったあとすぐに葬儀社を選ばなければいけません。時間的にも精神的にも余裕がなく、納得のいく判断がむずかしい場合もあります。故人にもご家族にも最適な選択ができるよう、できるだけ事前に情報を集めておきましょう。現代はインターネットが発達しています。気になるワードで検索し、各社の情報をチェックしておくだけでも選択時の参考になります。
また、故人を安置する場所も事前に決めておくとスムーズに搬送できます。近年は住宅事情からご自宅での安置がむずかしい方もいらっしゃいます。多くの葬儀社にはご遺体を安置できる設備をもっているので、担当者に相談してみましょう。ただし、別途料金を請求されたり面会時間が限られていたりするケースもあるため、メリット・デメリットを確認したうえで選択ください。
〈ご自宅で亡くなった場合〉
かかりつけの医師に連絡する
ご自宅で亡くなった場合は、かかりつけの医師に連絡して「死亡診断書」を発行してもらいましょう。かかりつけ医がいなければ、警察署に連絡。警察官がご家族への事情聴取や現場検証を実施し、事件性がないとわかると「死体検案書」を発行してもらえます。この死体検案書は死亡診断書と同じ内容で、扱いも同様です。
葬儀社へ連絡する
ご自宅でお葬式をあげる場合でも葬儀社のサポートは必要です。また、通夜式や葬儀・告別式を自宅以外の会場で開催するのであれば、故人を搬送する寝台車を手配しなくてはいけません。いずれにせよ早急にご家族と相談して葬儀社を決め、連絡を入れましょう。
ご遺体はそのままにし、救急車も呼ばない
かかりつけの医師がおらず警察に連絡した場合は、ご遺体は亡くなったときのままにし、動かしてはいけません。服を着ていないなど他人に見られたくない姿であったとしても、事件性がないと判断されるまではそのままにしておきます。
また、救急車を呼びたくなるかもしれませんが、救急車は生きている人のためのものでご遺体は搬送できません。亡くなっているのが明白な場合は救急車を呼ばないようにしましょう。
お棺を火葬場まで運ぶのが「霊柩車」。
「霊柩車」は、故人を納めたお棺を運ぶ車両をさします。近年では、お葬式会場から火葬場までお棺を運ぶときに使用することが多くなっています。
昔の日本ではお棺を「輿(こし・ひつぎ)」にのせて、火葬する場所や埋葬地まで人が担いで運んでいました。輿には屋根がつけられ、側面は花鳥など豪華な彫刻が施されていたのだとか。その装飾をされた輿が宮型霊柩車の原型ともいわれています。故人を搬送するものが輿から車両に変わっても、美しく飾った乗り物で火葬する場所までお棺を運ぶ文化は継承されていったようです。
霊柩車は、なぜ「柩」という漢字なの?
故人を納める入れものを「ひつぎ」と呼びますが、漢字では「棺」と「柩」の2つの表記があります。それぞれの漢字には意味として、棺は“なにも入っていない空のもの”、柩は“ご遺体が入ったもの”といった説があるため、“ご遺体を納めたひつぎ”を運ぶ霊柩車には「柩」の漢字が使われているともいわれています。
とはいえ、棺と柩の使い分けは厳密にはありません。現代ではご遺体の有無に関わらず、故人を納める入れものは「お棺」と表記するのが一般的です。
昔ながらの宮型は減ってきた? 霊柩車の変化。
霊柩車には、「宮型」「洋型」「バス型」「バン型」などの種類があります。
宮型霊柩車は、お棺をのせる棺室に神社や寺院などの造形を模した宗教的装飾を加えた昔ながらの霊柩車。白木や漆塗りの棺室には荘厳な彫刻やきらびやかな金細工を施したものが多く、豪華で目立つ外観をしています。
洋型霊柩車は大型の高級車を改造した霊柩車で、リムジン型とも呼ばれます。宮型のような派手な装飾はないため、高級感がありつつもシンプル。車両の色は定番のブラックだけでなく、ホワイトやシルバーもあります。
バス型は大型バスやマイクロバスを改造した霊柩車で、大人数が乗り込めるため僧侶や親族がいっしょに移動できます。また、ミニバンやステーションワゴンを改造したのがバン型霊柩車。寝台車と同じ役割をもっているため、寝台車・搬送車とも呼ばれます。
華美な宮型霊柩車は目を引くうえ宗教色も強いため、減少の傾向にあります。近年は多様なお葬式スタイルにマッチする洋型が好まれており、便利で価格も抑えられるバン型霊柩車を選択される方も増えています。
霊柩車と寝台車の見分け方
お金を受け取ってご遺体を運ぶ霊柩車は、寝台車と同様に「貨物自動車運送事業法」に基づいた許可が必要。ライセンスをもっている車には緑ナンバーが装着されています。また、霊柩車と寝台車は見た目が似ているものもあります。見分けるときは車両の前ドア下部をチェック。ここに「霊柩」「霊柩限定」と記されていれば、霊柩車です。
クラクションは鳴らさない?
お棺をのせた霊柩車が葬儀会場を出発するとき、大きなクラクションが鳴り響くのを耳にしたことはありませんか。出棺時の長いクラクションは最後のお別れを表しており、その後は音をださないのが習わし。昔はお寺の鐘を鳴らして出棺したからなど、由来は諸説あるようです。しかし、クラクションの音は大きく、騒音にもつながります。最近は周辺住民に配慮し、クラクションを鳴らす時間を短くしたり、鳴らさずに出発したりするケースも多いようです。
遠方からの搬送など、お葬式の車についての疑問にお答え!
故人の搬送やご家族の移動など、お葬式にまつわる車について気になる事柄はたくさんあるのではないでしょうか。よくある疑問にお答えします。
自家用車で故人を運んではダメなの?
病院で亡くなったあと、故人を自家用車にのせて自宅まで運びたいと考える方がいるかもしれません。身内のご遺体を自家用車で運ぶこと自体に問題はなく、法律違反にもなりません。ただ、人は死亡すると死後硬直がはじまり動かしにくくなります。さらに、故人の状態によっては体液などが漏れる心配もあります。ご遺体はデリケートです。プロにまかせ、専用の車両で搬送するのが最善の方法だと考えます。
遠方で亡くなった場合はどうやって運べばいい?
お葬式会場から遠く離れた場所で亡くなった場合は、長距離搬送が必要です。ほとんどの方は地元の葬儀社にお葬式を依頼するので、同じ葬儀社が故人を遠方まで迎えにでると時間もお金もかかります。遠方から運ぶのであれば、現地の葬儀社や遺体運搬の専門業者に“搬送だけ”を頼みましょう。また、葬儀社によっては全国にネットワークをもっているところもあります。まずは、お葬式をお願いする葬儀社に相談することをおすすめします。
火葬場まで、親族はどうやって移動するの?
火葬場にはご家族や親族など故人と縁の深かった人が向かいます。また、読経する僧侶に同行をお願いすることも多いようです。それらの方々は霊柩車にお供するハイヤーに分乗して移動します。人数が多い場合は送迎用のバスを頼みましょう。また、バス型やバン型の霊柩車でお棺といっしょに移動するのも可能です。
順番としては、霊柩車につづくハイヤーに位牌をもった喪主と遺影をもったご家族、同行する僧侶が乗ります。後続車には血縁の深い順に乗っていき、ハイヤーのあとにバスが連なって向かいます。