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お葬式コラム
お焼香の正しい方法。知っていますか?
仏式のお葬式や法要でのお焼香、みなさんはどうされていますか? 正式な作法は知らないけれど、「何となくイメージで」「前の人の見よう見まねで」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
お焼香の正しい作法はどんなものか、そもそもお焼香は何のためにあるのか。心から故人を弔い冥福を祈るためにも、お焼香についてぜひ知っておきたいものです。
なぜ、お焼香をするのでしょう?
お焼香で焚く「抹香」は、お香の一種。乾燥した樒(シキミ)の樹皮や葉を粉末にしたもので、心が落ち着くような独特の香りをもっています。実はこの香りに、お焼香の意味が込められているのです。
身を清めて故人と向き合う
そもそもお香を焚くというのは、仏教の作法のひとつ。香りによって自身の穢れを払い心身を清めるという意味があります。そのため、お焼香は自分自身の心身を清め、落ち着いた気持ちで故人と向き合うためにするといわれています。
故人のための「食べ物」として
仏壇やお墓にお参りするときに「お供え」として線香をあげますが、それは、仏教において香りは故人や仏さまの食べ物だと考えられているから。お焼香も、参列者一人ひとりが故人に香りを捧げて冥福を祈るために行います。
故人と心を通わせるために
仏教では、極楽浄土はよい香りが満ちている場所といわれています。香を焚くのは極楽浄土を表現する行為のひとつであり、香りを通じて故人と心がつながることを意味しています。お焼香をするひとときは、故人と向き合うひとときでもあるのです。
お葬式の流れと、お焼香の順番。
お葬式では、遺族や弔問客が着席して僧侶の読経の途中もしくはあとでお焼香がはじまります。
お焼香の順番に決まりはありませんが、基本的には席次と同じで、喪主、親族、来賓、弔問客となるのが一般的。場合によっては、故人と親密だった人やとくにお世話になった方などに特別にお願いする「指名焼香」「来賓焼香」や、社葬などの大規模なお葬式で会社や団体などを代表する「代表焼香」を行うこともあります。また、地域によっては「止め焼香」といって最後に血縁者が焼香する場合も。これにはお焼香する順番に優劣がないことを表すとともに、“不幸を止める”という意味も込められているそうです。
お葬式でのお焼香の順番や指名焼香の人数などは、事前に葬儀社との打ち合わせで決めておきます。不明なことがあれば、そのときに相談するといいでしょう。
身を清めて故人と向き合う
そもそもお香を焚くというのは、仏教の作法のひとつ。香りによって自身の穢れを払い心身を清めるという意味があります。そのため、お焼香は自分自身の心身を清め、落ち着いた気持ちで故人と向き合うためにするといわれています。
お焼香のスタイルと、その作法をご紹介。
お焼香には「立礼焼香」「座礼焼香」「回し焼香」という3つのスタイルがあり、どのスタイルにするのかはお葬式や法要が行われる会場に合わせて選びます。作法にも違いがあるので、具体的にご紹介していきましょう。
立礼焼香
祭壇に向かい、立った姿勢でお焼香を行う方法です。一般的な葬儀場に多い、椅子式の会場で行います。
●作法
(1)お焼香の順番がまわってきたら祭壇まで進み、ご家族と僧侶に一礼。
(2)焼香台の手前で祭壇の遺影に向かって一礼・合掌し、お焼香します。作法は宗派に合わせましょう。
(3)お焼香が終わったら、再び遺影に向かって一礼・合掌。遺影の方を向いたまま2、3歩下がってご家族と僧侶に一礼し、向きを変えて自分の席にもどります。
座礼焼香
座った姿勢でお焼香するスタイルです。お寺や故人のご自宅など畳式の会場で葬儀や法要を執り行う場合、座礼焼香になることが多いようです。
お焼香を行う流れは立礼焼香と同じですが、移動するときは中腰になること。また、座布団に座るときに一礼するのを忘れないでください。
●作法
(1)お焼香の順番がきたら中腰で焼香台の前に敷かれた座布団の手前まで進み、ご家族と僧侶に一礼。
(2)祭壇の遺影に向かって一礼してから、膝をついたまま座布団に正座して一礼・合掌。その後、宗派の作法でお焼香します。
(3)お焼香を終えたら再び遺影に向かって一礼・合掌。膝をついたまま祭壇の前から下がって一族に一礼し、立ち上がって自分の席にもどります。
回し焼香
ご自宅でお葬式や法要を行うと、会場が狭かったり参列者が多かったりして焼香台の前まで移動しにくいことがあります。その場合は、香炉を参列者にまわしてお焼香をする回し焼香にします。
●作法
(1)香炉が自分のところにまわってきたら、礼をして受け取り、自分の前に香炉を置きます。椅子の場合は膝の上に置きましょう。
(2)祭壇に向かって一礼・合掌し、お焼香を行います。
(3)お焼香が終わったら、再び一礼・合掌。次の方に香炉をまわします。
一礼にもルールやマナーがある?
一礼するときのお辞儀の仕方にもルールがあり、ご家族や僧侶に一礼する場合は少し浅めの45度、故人の遺影に一礼する場合は75度の深いお辞儀をするのが基本です。また、ご自身が遺族の場合は他の遺族に一礼する必要はありませんが、遠い親戚にあたる方などには一礼するのがマナーです。なお、僧侶は返礼しないのが作法とされています。br>
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焼香の作法にはさまざまな説があり、ご遺族にあいさつしないほうがいいとする向きもあります。どのようにふるまうのが正しいのか、葬儀社の担当者に確認しておくと間違いないでしょう。
1回? 3回? 正しいお焼香の回数とは?
抹香を親指・人差指・中指の3本の指でつまみ、そのまま目より高い位置までかかげておしいただき、香炉に落とす。
これがお焼香の一連の動作ですが、宗派によって「1回だけ」「3回繰り返す」「おしいただく」「おしいただかない」など作法が異なるようです。
●天台宗:おしいただき、3回。※ただし、明確な決まりはないようです。
●真言宗:おしいただき、3回。
●浄土宗:とくに決まりはありません。
●浄土真宗 本願寺派:おしいただかず、1回。
●浄土真宗 大谷派:おしいただかず、2回。
●臨済宗:1回目はおしいただき、2回目はそのまま落とします。
●曹洞宗:1回目はおしいただき、2回目はそのまま落とします。
●日蓮宗:おしいただき、1回。※宗派や地域で異なります。
ご自身と故人、宗派はどちらに合わせばいいの?
では、どの宗派の作法でお焼香をすればいいでしょうか。それには「故人の宗派に合わせて行う」「自分の宗派の作法に従う」という2つのケースがあります。故人の宗派に敬意を表して合わせるという人が多いようですが、信仰心が厚い人は自分の宗派の作法でお焼香しても構わないでしょう。ただし、参列者が多いお葬式などでは司会者から「お焼香の回数は1回で」とアナウンスされることがあります。その場合は、従いましょう。
お線香でお焼香、どうすればいい?
抹香ではなく、線香でお焼香するときもあります。
基本的な作法
(1)僧侶とご家族に一礼し、祭壇の遺影に向けても一礼。
(2)線香を右手にもってロウソクの火に近づけて点火し、左手で仰ぐか線香を軽く振って消します。線香の炎を消すときに口で息を吹きかけるのは不作法とされているので気をつけましょう。
(3)線香を静かに香炉に立て、合掌します。
また、線香の本数など作法も宗派によって異なるようです。
●天台宗:3本
●真言宗:3本
●浄土宗:1本
●浄土真宗 本願寺派:1本を2つに折り、火をつけて香炉の中に寝かせます。
●浄土真宗 大谷派:1本を2つに折り、火をつけずに香炉の中に寝かせます。
●臨済宗:1本
●曹洞宗:1本
●日蓮宗:1本 ※僧侶によって作法に違いが見られます。
神道では、お焼香ではなく「玉串奉奠」。
仏式のお葬式でお焼香をするように、神式のお葬式では故人の冥福を祈るために「玉串奉奠(たまぐしほうてん)」(玉串拝礼ともいいます)が行われます。この儀式では、榊の枝に四手(紙垂)という紙を結んだ「玉串」を祭壇に奉納し、故人へ想いを捧げます。
玉串奉奠の作法
(1)自分の順番がまわってきたら、まず喪主・親族に一礼。
(2)神官の前に進んで一礼し、両手で玉串を受け取ります。このとき、右手は手のひらを下に向けて上から玉串の根元を包むようにもち、左手は手のひらを上に向けて下から葉先を支えるようにします。
(3)玉串を胸の高さにもち、玉串案(玉串を置く台)の前まで進みます。祭壇の前で一礼し、玉串を時計回りに回転。まずは根元が手前に来るように回し、根本を左手に持ち替えて次は根元が祭壇の方を向くように回してから、玉串案の上に置きます。
(4)祭壇のほうを向いたまま2~3歩下がり、二礼二拍手一礼といって、2回深く礼をして忍び手(音を立てない柏手)を2回、最後に深く一礼。さらに2~3歩下がり、向きを変えて神官やご遺族に礼をして自分の席にもどります。
キリスト教では献花。
故人を悼んで白い花を捧げる「献花」。日本独自の習慣で、キリスト教式のお葬式ではプロテスタントでもカトリックでも献花が行われます。また、無宗教のお葬式では本来、お焼香などはありませんが、故人とのお別れのために献花を行うケースも多いようです。
献花の作法
(1)祭壇のほうに進み、ご家族に一礼してから花を受け取ります。受け取るときは、右手のひらを上向きにして花の部分を支え、左手のひらを下向きにして茎の部分をもちます。
(2)献花台の前に進み、祭壇に向かって一礼。花を時計回りに回転させ、茎のほうを祭壇に向けて献花台に両手で置きます。
(3)祭壇に向かい、手を合わせて黙とうするか深く一礼。2~3歩下がってご家族に一礼してから席にもどります。
故人とのお別れのひとときを大切に。
お葬式でのお焼香は、多くの参列者がいるなかで故人と1対1で向き合える大切な時間です。宗派によって作法が異なるため気を遣うところですが、作法に気を取られすぎて故人とのお別れがおざなりになってしまっては本末転倒です。故人への思いを大切に、心を込めてお焼香をあげてください。