葬儀社の選び方。押さえておきたいポイントは?
お葬式コラム
葬儀社がやってくれること、喪主がやること。
近年のお葬式では、取りしきりを“葬儀社にまかせる”ことがほとんど。葬儀社には必要なサービスや物品をセットにしたプランが用意されているため、ご家族は手間なく安心してお葬式を行えます。とはいえ、お葬式にまつわる物事は多岐にわたるもの。すべてのことを葬儀社がカバーしてくれるわけではありません。いざというときにあわてないためにも、一般的に葬儀社がサポートしてくれる範囲を事前に把握しておくといいでしょう。
そもそも葬儀社とは? どんな会社なの。
「葬儀社」とは、お葬式に関わるさまざまなサービスを提供する事業者のこと。「葬儀屋」「葬祭業」「葬儀会社」とも呼ばれます。弔事に精通したプロフェッショナルなスタッフが葬儀全般をサポートし、大切な人を亡くされたご家族の負担を軽減するのが大きな役割です。
昔は親族や地域の人たちで助け合ってお葬式を行っていましたが、時代とともに地域との関わりが希薄になったこともあり専門のサービスを提供する会社が増加。現在では、ほとんどのご家族が葬儀社に依頼してお葬式を執り行っています。
お葬式の運営にはプロフェッショナルな技術や知識を求められますが、葬祭業を営むための公的な資格はなく、認可や届出も必要ありません。そのため、全国には大小さまざまな規模の葬儀社が存在し、サービス内容もまちまち。事業者ごとに対応の違いがあるのも現実です。
「思っていたのとは違う…」と後悔しないためにも、依頼しようとしている葬儀社が“どんなサービスを提供しているのか”、“他の葬儀社と比較して内容や金額に違いはあるのか”などを確認しておくといいでしょう。
一般的に葬儀社がサポートするのは、どんなこと?
基本的に葬儀社は、お葬式に関わるほぼすべてのことをサポートします。しかし、葬儀社によって対応が異なり、また選ぶプランでも内容に違いがでてく場合があります。
それでは、現在の葬儀会社が提供している一般的なものをご紹介しましょう。
ご遺体の搬送と安置
現代では病院や施設などご自宅以外で亡くなることが多いので、死を迎えるとご遺体を移動させる必要があります。葬儀社はご遺体の搬送から担当し、依頼を受けると病院まで車でお迎えにあがって安置場所へ運びます。ちなみに、葬儀社の多くが365日24時間対応。いつでも連絡を受付けています。
安置でも葬儀社がサポートし、安置施設の利用やご遺体を保全するドライアイスなどの物品も用意。枕飾り一式も設置してくれます。
お葬式の提案や相談
お葬式のお打ち合わせでは、喪主やご家族、故人の意向をヒアリングして最適なプランを葬儀社が提案。プランに含まれていないオプションなどに関しても説明し、納得できるお葬式を実現できるよう内容を決めていきます。
また、多くの人にとってお葬式は慣れていない儀式。わからないことや不安なことを解消するための相談にものってもらえます。
会場や火葬場の手配
お葬式を執り行う会場だけでなく、火葬場の手配も葬儀社が担当します。火葬場には公営と民営のものがあり、火葬料金だけでなくサービスの質にも違いがあります。葬儀社からの説明を受け、納得したうえで予約をお願いしましょう。
ご遺体のケアや納棺のサポート
ご遺体を納めるお棺や、出棺時の霊柩車などもプランに含まれていることがほとんど。納棺の儀もサポートしてくれます。
また、ご遺体を洗い清める「湯灌」や腐敗防止処置をする「エンバーミング」などご遺体のケアをオプションとして用意している葬儀社も数多くあります。
遺影の準備
祭壇に飾る遺影を、故人の写真や画像から加工して作成。最近は遺影の自由度が高まり、背景画像やフレームもお好みで選べるようになっています。葬儀社のアドバイスを受けながら、故人らしい遺影をつくりましょう。
通夜式や葬儀・告別式に関する準備
会場に祭壇を設営するなど、通夜式や葬儀・告別式を営むための準備は葬儀社が担います。供花や供物の手配、焼香セットなどお葬式に関わるものは一式そろうので、喪主が準備に奔走する必要はありません。
また、参列者に渡すお礼状などもほとんどの葬儀社で準備してもらえます。
お葬式当日の運営
通夜式や葬儀・告別式の当日も葬儀社がしっかりサポート。スムーズに進行できるよう、運営スタッフがバックアップします。
お葬式では「想定していたより参列者が多い」「気分が悪くなった人がいる」など予想外の出来事が起こる場合があります。そんなときも葬儀社のスタッフが対応するので、あわてずに相談しましょう。
必要な手続きの代行
人が死亡すると、「死亡届」を役所に提出しなくてはいけません。また、ご遺体を火葬するためには、自治体が交付する「火葬許可証」も必要です。死亡届へ記入する「届出人」には親族または同居人しかなれませんが、役所への提出は代理人でもかまいません。そのため、葬儀社が代行して手続きを行うケースが増えています。
お葬式後のサポート
お葬式を終えるとご遺体を火葬します。葬儀会場から火葬場までへのご遺体の搬送や参列者の移動も葬儀社が手配。さらに、火葬を終えたご遺骨を納める骨壺なども用意する葬儀社がほとんどです。お葬式当日に初七日法要を執り行う場合も、葬儀社にお願いしましょう。
また、ご自宅でご遺骨や白木位牌を安置する「自宅飾り」も葬儀社が準備し、設置します。
そのほか、お願いできること
葬儀社はお葬式にかかわること全般をサポートしてくれるため、プランに含まれていない物品やサービスでもオプションとしてお願いできることがあります。
例えば
●通夜ぶるまいや精進落としなどの料理の手配
●参列者への返礼品の手配
●読経いただく僧侶の手配
●貸衣裳や着付けの手配
●年忌法要の依頼 ……など
ピックアップしたものは、一例です。すべての葬儀社にあてはまるわけではありませんし、対応している葬儀社でも設定しているプランの内容はさまざま。サービスによっては、追加料金が発生してしまうケースもあります。
葬儀社とのお打ち合わせでは、どこまでがプランに含まれ、どこからが追加料金になるのかを細かく確認。書類として残しておくこともおすすめします。
喪主がやるべき大きな役割が「決める」こと。
近年のお葬式では多くのことを葬儀社が担うため、喪主やご家族の負担が軽くなっています。しかしながら、葬儀社ができないこともたくさんあり、喪主は準備から当日まで対応に追われているのが現実でしょう。
いろいろやることのある喪主ですが、そのなかでも重要な役割となるのが「決める」ことです。
人が亡くなると、親族の代表としてお葬式を取り仕切る「喪主」を選びます。いわば、喪主はお葬式の責任者。大切な役目なので、故人と縁の深い方となる配偶者やお子さまが務める傾向にあるようです。
そうして選ばれた喪主には、選択しなければいけないことが矢継ぎ早にやってきます。
例えば…
●どこの葬儀社にお願いするのか
●お葬式を執り行う日をいつにするのか
●どのようなお葬式スタイルにするのか
●誰に連絡して、参列いただくのか
●受付などの担当を誰にするのか
●お香典を受け取るのか・辞退するのか
●僧侶へのお布施はいくらにするのか
●焼香の順番や席順はどうするのか
●いただいた供花や供物をどう並べるのか
●弔電・弔辞の順番はどうするのか
●通夜ぶるまいや精進落しの料理は何がいいのか
●返礼品はどんな商品にするのか
●火葬場へは誰が、どうやって行くのか ……など
ざっくりリストアップしただけでも、決定しなくてはいけない事柄がこれだけあります。そのうえ、人が亡くなってからお葬式を執り行うまでには、あまり時間がありません。時間に追われながら重要なことを選択していかなければいけないため、どうしても精神的・肉体的な負担が喪主にかかってしまいます。
喪主が体調を崩しては、よいお葬式を営めません。ひとりで抱え込まず、ご家族や葬儀社のサポートを受けながら無理なく最適な判断をしていきましょう。
お葬式をサポートするプロフェッショナル「葬祭ディレクター」とは?
喪主やご家族の想いを踏まえて満足のいくお葬式を実現させるためには、タッグを組む葬儀社スタッフの能力の高さも大きな要素。喪主やご家族が望むお葬式を実現するためのプランニング力と実行力、さらにお葬式は宗教儀式でもあるため、宗教・宗派による作法の違いや地域の風習などを把握していることも大切です。
それらが備わっていることを表す、ひとつの目安が「葬祭ディレクター」という資格。そのスタッフが、お葬式を運営・進行するうえで必要な知識と技術をもっていると証明するものです。
葬祭ディレクターとは?
「葬祭ディレクター」とは、お葬式の準備や運営、進行などに必要な知識と技能を審査し、認定する民間資格。業界を代表する組織である「全日本葬祭業協同組合連合会」と「全日本冠婚葬祭互助協会」が1996年に設け、厚生労働省からも認可されています。
葬祭ディレクターの資格には「一級」と「二級」があり、受験資格や担当できる葬儀に違いがあります。
●一級葬祭ディレクター
受験資格:葬祭実務経験5年以上、または二級合格後2年以上の葬祭実務経験者
技能審査の内容:すべての葬儀における相談、会場設営、式典運営等の葬祭サービスの詳細な知識と技能について学科試験と実技試験を実施
担当できる葬儀:個人葬、社葬
●二級葬祭ディレクター
受験資格:葬祭実務経験2年以上
技能審査の内容:個人葬における相談、会場設営、式典運営等の葬祭サービスの一般的な知識と技能について学科試験と実技試験を実施
担当できる葬儀:個人葬
葬祭ディレクターの受験には実務経験が条件にあり、一級を受けるためには最低でも4年の経験が必要です。このことからも、葬祭ディレクターの資格を有している人は、「知識」と「技能」、「経験」をもったお葬式のスペシャリストであるのがわかります。
とはいえ、葬祭ディレクターという資格だけで判断できませんし、資格をもっていないからといって仕事ができないわけではありません。葬祭ディレクターでなくても、親身になってお葬式をサポートするスタッフはたくさんいます。ひとつの基準としてとらえ、葬儀社選びの参考にしてみてはいかがでしょうか。