近年のお墓事情。どんな種類があるの?
お葬式コラム
お墓参りの作法。いつ、どうやって参るのがいい?
お盆やお彼岸に「お墓参り」をし、ご先祖に手をあわせる人は多いのではないでしょうか。お墓参りは日本に伝わる供養の文化のひとつで、年中行事として親しまれています。このように、当たり前のように行っているお墓参りですが、その目的や作法についてはあまり知られていないように感じます。今回のコラムではお墓参りをピックアップし、お墓参りの意味や行くタイミング、持ち物、手順、適した服装など幅広くご紹介しましょう。
お墓参りは、故人が眠っている場所をお参りすること。
「お墓参り」は、文字どおり〈お墓=故人が眠っている場所〉に〈参り=訪ねて〉拝むこと。日本における供養方法のひとつで、ご先祖さまや故人の冥福を祈り、あの世で安心して暮らしていけるよう願うのです。ちなみに、お参りの〈参〉という漢字は仏さまに対して使われるもので、神さまに対するときは〈お詣り〉を用いるそう。
さらに、お墓参りには、〈亡くなった人と生きている人が交流できる場〉という意味もあります。わたしたちはお墓に手を合わせるとき、故人に向かって近況を報告したり、これからも見守っていてほしいとお願いしたりします。そして、先人がいたから今の自分が存在することを実感し、ご先祖さまや故人への感謝を捧げるのです。このように、お墓参りはこの世にいない人とつながりを感じられる場。これからも大切にしたい行いです。
ご先祖以外のお墓に参ってもいいの?
ご先祖以外で、友人・知人など縁のあった方のお墓参りをしても問題ありません。また、歴史的に有名な偉人のお墓は観光スポットになっていたりするので、大勢の方が気軽に訪れています。
とはいえ、お墓は神聖な場所です。無作法な行いをしたり、周囲に迷惑をかけるマナー違反をしたりするのは厳禁。そこに眠る人へ思いを馳せながら、心静かに手を合わせましょう。
お墓参りのタイミング。ふさわしい日や時間を教えて!
基本的にお墓参りはいつ行ってもかまいません。とはいえ、ふさわしい日や時間帯はあるといわれています。なるべくその日に行い、やむをえない予定がある場合は、前日など参りたい日までのなるべく近いタイミングでお墓を訪れるといいでしょう。
命日
人が亡くなった日である「命日」は、お墓参りに適した日。命日には「祥月命日(しょうつきめいにち)」と「月命日」があり、祥月命日は故人が亡くなったときと同月同日のことで年に一回です。
一方の月命日は、祥月命日以外の月の故人が亡くなった日にち。例えば、2021年の9月10日に死亡した場合、2022年以降の9月10日が祥月命日で、その他の月の10日が月命日にあたります。
法要
仏教では、故人が亡くなってから節目節目で法要を行います。初七日や四十九日など命日から100日目までは忌日法要、一周忌以降は三回忌・七回忌と年忌法要を行っていきます。
法要は追善供養ともいい、お葬式後に故人の冥福を祈るものなので法要を執り行った日に参列者たちでお墓参りをするのが一般的。とはいえ、決まりごとではないので、行わなくても問題はありません。
お彼岸
日本には春と秋に「お彼岸」の期間があります。仏教用語で「彼岸(ひがん)」はあの世を意味し、現世は「此岸(しがん)」と呼ばれます。一年のなかで太陽が真西に沈む春分と秋分の日は彼岸と此岸がもっとも近づく日といわれており、その期間にお墓参りをして故人を偲ぶのがよいとされています。
春彼岸は春分の日を中日とした7日間、秋彼岸は秋分の日を中日とした7日間。この期間ならいつお墓参りをしてもいいので、都合のいい日を選んで行いましょう。
お盆
「お盆」は故人の魂があの世からこの世に帰ってくる時期。このタイミングでお墓参りをするのは、日本の風習のひとつでもあります。
お盆の時期は地域によって異なりますが、一般的には8月13日〜16日の4日間。お参りの日時に決まりはないので、期間中いつ行ってもかまいません。とはいえ、先祖の魂を迎えにいくという意味で、魂が帰ってくる日とされる盆の入り8月13日にお墓参りをする人が多いようです。
年末年始など節目となる時期
年末年始もお墓参りをするのにうってつけの時期。年末であれば一年が無事に終えられる感謝を伝え、お墓の大掃除をしてもいいでしょう。年始は親族が集まりやすいため、そろってお墓参りをすることができます。新しい年を迎えた清々しい気持ちとともにご先祖さまにあいさつし、その年がつつがなく過ごせるよう見守っていただきます。 このほかにも、結婚や出産など人生の節目となるタイミングでもお墓参りをし、ご先祖に喜びを報告するといいでしょう。
お墓参りに適した時間帯
お墓参りの時間に決まりごとはありません。都合のいい時間に足を運べばいいでしょう。
おすすめは午前中。朝の澄んだ空気のなかでお参りすると気持ちがいいものですし、仏さまごとは早くにしたほうがいいという考えもあります。可能であれば、午前中に行いましょう。
夕方以降は日が落ちて見通しが悪くなるため、できるだけ避けたほうが無難。とくに夜は暗くて危険なうえに周囲の迷惑につながる恐れがあります。民間の霊園などは開園時間が決まっており、夜には閉まっているケースもあるので確認して向かってください。
お墓参りをしてはいけない日はあるの?
お墓参りをしてはいけない日は、基本的にありません。ご自身が行きたいタイミングでお墓参りをしていいのです。
また、「六曜」を気にされる方がいらっしゃるかもしれません。毎日の吉凶を占う六曜は慶事や弔事を行ううえで参考にされ、“結婚式は大安がいい”、“友引のお葬式は避ける”などといわれています。お墓参りを弔事のひとつと考えると、仏滅や友引にお墓参りをしてもいいのか迷われるかもしれませんが、お墓参りはいつ行っても大丈夫なので避ける必要はありません。もちろん、気にされる方は無理をせず、別日にお参りしましょう。
お墓参りの服装。ふさわしい装いはあるの?
お墓参りに守るべきルールはありません。身につける服も、季節やお好みで選んで問題はないのです。しかしながら、お参りする目的や状況によってはふさわしい装いがあるので、シーン別にご紹介しましょう。
命日やお彼岸など、普段のお墓参り
命日やお彼岸など年中行事としてのお墓参りは、これといって服装に気をつける必要はありません。普段着で行ってもいいでしょう。ただし、寺院や霊園は故人が静かに寝っている場所。半ズボンやビーチサンダルなど、レジャーを楽しむようなカジュアルファッションは避けたほうが無難です。色も、白や紺、黒など落ち着いたものをチョイスすると場の雰囲気になじみます。
法要時のお墓参り
法要時には集まった親族でお墓参りをすることも多いでしょう。そのときは、法要で身につけていた服装でお墓へ向かいます。
法要に適した服装は、男女とも三回忌法要まではお葬式と同じ喪服を、七回忌からは準喪服やそれに近い平服を身につけるのが基本。〈平服でお越しください〉と案内があっても、ダークカラーのスーツやワンピースなど略喪服(略礼服)と呼ばれる装いをすると失礼にあたりません。
結婚や出産、入学などを報告するとき
結婚や出産、子どもの入学など、人生の節目でもお墓参りをしてご先祖に報告します。その場合は、報告にふさわしい服装をおすすめします。結婚であればフォーマルファション、入学なら制服、成人式なら振り袖などどのような報告をするのかがわかる装いをするといいでしょう。また、出産を報告するときは赤ちゃんといっしょに行き、元気な顔をお披露目すると喜ばれます。
お墓のそうじをしっかりするとき
お墓参りのときはお墓のそうじもします。軽いそうじ程度であれば服装に気をつける必要はありませんが、しっかりきれいにしたいときは動きやすく汚れてもいい服を着ていきましょう。足元もスニーカーがおすすめ。また、草むしりをする軍手や汚れを防ぐエプロン、日よけの帽子などを準備しておくと便利です。
服装の注意点
お墓参りの服装に決まりごとはないとはいえ、気をつけたいポイントはあります。まず避けたいのは〈派手な装い〉です。赤や黄色といった鮮やかな色や大きな花柄といった華やかな模様の服はミスマッチ。半ズボンやミニスカートなど〈露出の多いファション〉も似合いません。アクセサリーや時計など〈きらびやかな装飾品〉も外しておいたほうがいいでしょう。また、〈ファーなどの毛皮製品〉は仏教の「不殺生」の教えに背くため、避けたほうがいいという意見もあります。
忘れがちなのが〈香り〉への配慮。香りは意外と遠くまで漂うため周囲に迷惑をかけるうえ、墓地によくいるハチは香水の匂いに反応するともいわれます。香水やニオイの強い整髪料などの使用はやめておきましょう。
お墓参りの持ち物。なにをもっていけばいい?
お墓参りは故人を供養することなので、一番大切なのはお墓に眠るご先祖さまを大切に思う気持ちをもつこと。さらに、ご先祖さまに捧げるお供え物やお墓をきれいにするおそうじ道具などをもっていくといいでしょう。 持ち物が多くなるので、忘れ物がないよう出かける前のチェックをおすすめします。
お供え物
●線香
線香の香りはお参りする人の身を清め、心を落ち着けてくれるといわれています。また、亡くなった人は〈香りを食べる〉ともいわれ、線香の香りはご先祖さまのごちそうにもなるのです。お墓参りには線香を持参し、よい香りを供えるといいでしょう。線香の火は手であおぐか縦に振って消すのがマナーです。
●ロウソク
仏教でロウソクの灯りは、闇を照らして迷いなく悟りの道へと導く神聖なもの。また、あの世から故人の魂が降りてくるときの目印にもなるそうです。
お墓参りではロウソクを灯し、お参りを終えたら火を消しましょう。そのとき、息を吹きかけて消すのはタブー。手であおいで消火してください。
●水
水は「浄水」とも呼ばれ、お参りする人の心を洗うもの。清らかな水であることが前提ですが、わざわざミネラルウォーターを用意する必要はありません。墓地などに設置してある水道から汲んで供えればいいのです。また、水はお墓のそうじにも使います。供える水とそうじの水を入れる容器はわけておき、水鉢にはきれいな水を入れましょう。
●花
墓前を華やかに彩るだけでなく、“感謝の気持ちを表す”ともいわれるお花は、供養の象徴ともいえる存在。お墓参りには欠かせないお供えです。
供える花は生花が基本ですが、造花でも問題ないとされています。花の種類も決まりはなく、故人が好きだった花や庭に咲いている花でもいいでしょう。ただし、トゲや花粉の多い花、香りの強い花は避けたほうが無難。お店には「仏花」としてセットされたものが売られているので、それを活用すると便利です。
●食べ物や飲み物
食べ物や飲み物は「飲食(おんじき)」と呼ばれ、ご家族が日常で食べているものを供えるとされています。とはいえ、普段のごはんは持ち運びや衛生面で懸念があるので、故人が好きだった菓子や季節の果物などを持参するのが一般的。タバコやお酒などの嗜好品を供える人もいるそうです。お供え物なので直に置かず、おぼんや懐紙などの上に乗せて供えます。箱に入っている焼き菓子などは箱から出し、数個ほど置くといいでしょう。
墓参り後は、供えたものを持ち帰るのがマナーです。鳥や動物が寄ってきたり、腐ってお墓を汚したりするので食べ物の放置は厳禁。その場で食べてもかまいませんが、食べかすなどを残さないよう軽くそうじして帰ります。
そうじ道具やお参り時に必要なもの
●お墓のそうじに役立つもの
お墓参りをするときは、そうじをしてお墓をきれいにします。そうじをするときに役立つ道具ももっていきましょう。
・ほうきとちりとり:区画の落ち葉やゴミを集めます。
・スポンジや(毛先のやわらかい)ブラシ:新しいものを使い墓石をやさしく洗います。
・タオルやぞうきん:新しいものを用意。墓石についた水気はタオルで拭き取ります。
・軍手やゴム手袋:区画の雑草を除去するときに便利です。
・ゴミ袋:基本的にゴミは持ち帰ります。
●お参り時に必要なもの
お参りをするときに必要なものや、あると便利なものもいくつかあります。
・数珠:数珠を手にかけてお参りします。
・マッチやライター:ロウソクに火をつけるときに使います。
・懐紙やおぼん:食べ物などを供えるときに敷きます。
・湯のみ:水鉢のないお墓の場合、水やお茶を入れて供えます。
・ひしゃくや手桶:貸してくれる霊園もあるので確認するといいでしょう。
お参りの作法。正しいお墓参りはあるの?
お墓参りには、手をあわせてお参りする以外にもやっておいたほうがいいことがいろいろあります。必ず守るべき決まりごとはないのですが、一般的な流れを知っておくとスムーズなお参りができるのではないでしょうか。
(1)手を洗う・手桶に水を入れる
寺院や霊園に設置されている水場で手を洗い、きれいにしましょう。さらに、持参したり借りたりした手桶に水を入れてお墓にもっていきます。
(2)本堂にお参りする
お墓が菩提寺などの寺院にある場合は、まず本堂に向かいあいさつ。日々、見守りいただいていることへの感謝とお墓参りに来たことを伝えます。 お墓参りでは、住職へのあいさつやお布施は基本的に不要。ただし、法要時のお墓参りで僧侶に読経いただいたときはお布施を用意しましょう。
(3)お墓参りに来たことをあいさつ
お墓に到着したら、まずは墓前で合掌。「お墓参りに来ました」とあいさつしましょう。あいさつは口にだしても、心のなかでしてもかまいません。
(4)お墓を掃除する
お参りする前に、お墓をきれいにします。雑草や落ち葉を取り除き、ほうきで区画のゴミを集めます。墓石はスポンジやブラシで汚れを取り、水鉢や花立てもきれいにしましょう。最後は乾いたタオルで墓石の水気を拭き取って仕上げます。
(5)お供えをする
お墓をきれいにしたら、お供えをします。花立てに水を入れて花を挿し、水鉢には新鮮な水を入れます。食べ物は懐紙やお盆の上に乗せて供えましょう。ロウソクを灯し、お線香にも火をつけます。
(6)お参りする
参る人がそれぞれに火のついた線香を供え、お墓に向かって合掌します。数珠をもっていれば手にかけ、故人の冥福を祈りましょう。お墓参りに複数人で来たときは、故人と縁の深い方から順番にお参りします。
(7)後かたづけをして帰る
すべての人がお参りしたら、お墓参りは終了。ロウソクや線香の火を消し、食べ物・飲み物などのお供えを下げて持ち帰ります。清掃時のゴミは持ち帰るのが基本ですが、霊園にゴミ置き場がある場合はそこに捨ててもかまいません。ひしゃくや手桶を借りていたなら、軽く水洗いして返却します。