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お葬式コラム
宗派がわからないときはどうする? 見分け方と調べ方。
日本の宗教といえば、仏教がイメージされます。実際、日本のお葬式の約90%が仏式で執り行われているのだとか。ひとことで仏教といっても多くの宗派が存在し、それぞれにお葬式のしきたりや営む儀式が異なります。
宗教を意識して暮らすことが減った現代では自身の宗派を詳しく知っている人はそう多くありませんが、葬儀社との打ち合わせでは必ず、宗教・宗派を確認します。急なお葬式で慌てないよう、仏教の宗派についての基礎知識や見分け方、わからないときの調べ方などをお伝えします。
そもそも、仏教においての宗派とは?
仏教は紀元前五世紀ごろ、今から約2500年前にお釈迦さま(ブッダ)がインドで開いた宗教。そのなかの「宗派」とは、仏教から派生した分派のことをさします。
お釈迦さまは20歳で出家して約40年もの長い間、膨大な教理を説かれました。信者たちはお釈迦さまが存命のころはひとつになって信仰していましたが、亡くなってしばらくすると教えについて解釈の違いが生じてきたそうです。そこから分裂がはじまり、宗派が誕生。仏教が中国に伝わると、さらに数多くの宗派が成立していきます。
仏教が日本へ伝わったのは、六世紀の半ばだといわれています。神道が主な宗教であった日本では、伝来してきた仏教をそう簡単に受け入れられません。しかし、当時の二大勢力のひとつであった蘇我氏が支持。神道を守護していた物部氏との争いに勝利したことで、仏教は公式に認められます。その後、聖徳太子によって広まり、定着。平安時代には最澄と空海(弘法大師)が現れ、それぞれが開祖となって天台宗や真言宗を開きます。鎌倉時代には親鸞聖人による浄土真宗、日蓮上人による日蓮宗なども誕生し、歴史のなかで数多くの宗派ができていったのです。
現在の日本では伝統仏教として、「十三宗五十六派」が認められています。これらは、1940年(昭和15年)に宗教団体法が施行される前から成立し、教義や伝統が認知されていた宗旨・宗派のこと。ほかにも数え切れない宗派が存在しますが、日本においては十三宗五十六派が主な宗派として挙げられます。
お釈迦さまの教えの解釈の違いから宗派が生まれたことからもわかるように、同じ仏教とはいえ宗派にはそれぞれの教えがあり、経典も異なります。また、人が亡くなってからの〈仏になる時期〉や〈仏になる手段〉の意味合いが変わるため、お葬式など故人の弔い方にも違いがあります。お葬式を執り行うためには、自分たちの宗教・宗派を知ることはとても大切なのです。
各宗派の基本情報やお葬式マナー、宗派の見分け方。
伝統宗派「十三宗五十六派」は日本で認められている主な宗派。さらに、そのなかの8つは「日本八宗」と呼ばれて日本の代表的な宗派だといわれています。
宗派には、ご先祖の祀り方などに特徴がある場合があります。それらを確認すれば宗派を見分けられるので、宗派がわからないときの参考にしてください。
浄土宗
法然上人が開祖となって開いた大乗仏教の宗派で、〈念仏を唱えれば誰もがひとり残らず救われる〉と説いています。死後も念仏を唱えれば極楽浄土へ導かれると考えられ、厳しい修行を重ねることによる成仏を否定しています。本尊は「阿弥陀如来」で、経典は「浄土三部経(阿弥陀経、無量寿経、観無量寿経)」。唱える念仏は「南無阿弥陀仏」です。
●お葬式の特徴
故人が極楽浄土に行けるよう、僧侶と参列者がいっしょに念仏を唱える「念仏一会(ねんぶついちえ)」が行われます。
●お葬式マナー
焼香は3回押しいただき、供える線香は1本を香炉の中央に立てます。
●見分け方
戒名に阿弥陀如来を表す梵字である「キリーク」が頭に入ります。また、戒名の中に「誉」という文字が入ることもあります。
仏壇は阿弥陀如来を中央に祀り、向かって右に高祖善導大師、左側には法然上人の仏像が飾られます。また、本尊の真下である最上段に位牌を置くのも浄土宗の特徴です。
浄土真宗
浄土宗の分派で、法然の弟子である親鸞聖人(しんらんしょうにん)が鎌倉時代の初期に開宗。本尊は「阿弥陀如来」で、経典は「浄土三部経(阿弥陀経、無量寿経、観無量寿経)」。唱える念仏は「南無阿弥陀仏」です。このように浄土宗と浄土真宗は基本的な部分は同じなのですが、親鸞は浄土宗の教えをさらに発展させています。例えば、〈念仏を唱えることで誰もが極楽浄土に行ける〉と説く浄土宗に対し、浄土真宗は〈阿弥陀仏の救いを信じるだけで往生できる〉と教えています。
また、浄土真宗は真宗十派といわれる10の宗派に分かれ、東本願寺を本山とする「真宗大谷派」と西本願寺を本山とする「本願寺派」という二大宗派があります。
●お葬式の特徴
別れを告げる式である「告別式」を行いません。また、死後に仏弟子になる概念がないため戒名や授戒がなく、仏法への帰依を表す「法名」をもらいます。
●お葬式マナー
お香を押しいただかず、つまんだまま香炉へ焚きます。本願寺派は〈1回〉、大谷派は〈2回〉です。線香は1本を香炉の幅に合わせて折り、寝かせてお供えします。
●見分け方
法名として男性は「釋」「釈」、女性は「釋尼」「釈尼」をつけます。位牌をつくらないので、仏壇には法名軸や過去帳が飾られます。
また、大谷派か本願寺派かは仏壇に祀ってある阿弥陀如来の掛け軸で判別でき、後光の数が〈8本〉だと本願寺派、〈6本〉は大谷派になります。
真言宗
平安時代初頭に空海(弘法大師)が開き、師から弟子へ口伝によって伝授される密教の日本でただひとつの純粋な宗派だといわれています。
本尊は「大日如来」。すべてのものは大日如来が姿を変えたものとされ、人も仏も本質的には同じであると考えられています。そのため、本来もっている仏性に目覚めれば、人間が現世の肉体のままで仏になれる〈即身成仏〉が説かれています。
経典は「般若心経、大日経、金剛頂経、理趣経」など。唱える念仏は「南無大師遍照金剛(なむたいしへんじょうこんごう))です。また、真言宗は多くの分派があり、主な16派には18の総本山があるため「真言宗十八本山」と呼ばれています。
●お葬式の特徴
頭頂に水を注ぐ儀式「灌頂(かんじょう)」や、土砂をご遺体に散布する「土砂加持(どしゃかじ)」を行います。
●お葬式マナー
焼香は3回押しいただきます。供える線香は3本で、自分から見て逆三角形になるよう手前に1本、奥に2本を香炉に立てます。
●見分け方
戒名では、頭に大日如来を表す梵字の「ア」を入れることが多いようです。
仏壇には本尊の大日如来を祀り、空海や不動明王の像が置かれています。曼荼羅を飾る場合もあるようです。大日如来は「智拳印」という、左の人差し指を右手で握ったポーズをとっています。
天台宗
平安時代初頭、中国で学んだ最澄(伝教大師)により日本に伝えられた大乗仏教の宗派。日本における総本山は比叡山延暦寺です。天台宗には定められた本尊がなく、経典は主に「法華経」を使用。そのため、「天台法華宗」と呼ばれる場合もあります。
法華経では〈すべての人が仏になれる〉と説かれ、どのような人も「一乗(ひとつ教え)」で救われると考えられています。また、最澄は天台教学と教えが共通する〈密・禅・戒〉の三宗も取り入れたため、天台宗は多くの教義を包括した総合仏教だとされています。
唱える念仏は「南無宗祖根本伝教大師福聚金剛(なむしゅうそこんぽんでんぎょうだいしふくじゅこんごう)」。「南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)」を唱えることも多いようです。
●お葬式の特徴
法華経を唱えて日々の懺悔を行う「顕教法要(けんぎょうほうよう)」、極楽へ導かれるのを祈る「例時作法(れいじさほう)」、仏のことば(真言)で故人を弔う「密教法要(みっきょうほうよう)」という3つの儀式を大切にています。
●お葬式マナー
焼香の回数に決まりはありませんが、3回押しいただくことが多いようです。線香は3本で、自分から見て逆三角形になるよう手前に1本、奥に2本を香炉に立てます。
●見分け方
戒名では、阿弥陀如来を表す「キリーク」や大日如来を表す「ア」、釈迦如来を表す「バク」という梵字が先頭に使われます。
仏壇には、本尊として阿弥陀如来が祀られること多く、その右側に天台宗の開祖である天台大師の影像を、左側には伝教大師である最澄の影像が飾られるようです。
臨済宗
中国禅宗五家のひとつで、日本へは鎌倉時代に栄西(えいさい)によって伝えられます。浄土宗や曹洞宗、浄土真宗らとともに、鎌倉新仏教のひとつとして数えられ、鎌倉幕府二代将軍の源頼家の支援を受けて広まりました。
自らの座禅によって悟りの境地へと至る〈自力〉の考えをもち、誰でもひたすら座禅をすればお釈迦さまと同じように人の尊さに気づけるといわれています。また、「看話禅(かんなぜん)」「公案禅」と呼ばれる座禅は、人と向き合う対面式で師と弟子が問答を繰り返します。
臨済宗には決まった本尊がなく、経典も定められているものはありません。般若心経や大悲呪(だいひしゅう)などが、よく読まれているようです。
唱える念仏は「南無釈迦尼仏(なむしゃかにぶつ)」。こちらは、お釈迦さまに帰依することを意味しています。
●お葬式の特徴
亡くなった人を仏の弟子にする授戒と、仏性に目覚めさせて仏の世界へ導く引導の儀式が中心。引導では僧侶が「喝!」と叫び、故人の魂を旅立たせます。また、「山頭念誦」「鼓ばつ」と呼ばれる、故人の成仏を願って「往生咒(おうじょうしゅ)」を唱え太鼓を打ち鳴らす儀式も特徴のひとつです。
●お葬式マナー
焼香は押しいただかず1回。線香は1本を香炉の中央に立てます。
●見分け方
釈迦牟尼仏を表す梵字「バク」や「空」が戒名の先頭に入る場合があります。
仏壇では、中央に釈迦牟尼仏をお祀りします。右側に中国禅宗の開祖である達磨大師の掛け軸を、左側には観世音菩薩の仏像や花園法王の掛け軸を飾ることが多いようです。
曹洞宗
禅宗の一派。鎌倉時代に中国から正伝の仏法を日本へ伝えた道元禅師(どうげんぜんじ)と、その教えを全国に広めた瑩山禅師(けいざんぜんじ)を両祖とし、お釈迦さまとともに「一仏両祖(いちぶつりょうそ)」として仰いでいます。
座禅を拠りどころとし、ただひたすら座る「只管打坐(しかんたざ)」をすることで悟りの姿に近づくとされています。また、食べる、寝るなど生活行為にも坐禅と同じ価値があるとされ、暮らしなかの行いも坐禅のように務めることが大切だと説いています。
●お葬式の特徴
故人がお釈迦さまの弟子になるために必要な戒名や授戒、引導に重点をおきます。鳴り物の仏具を3人の僧侶がもってチン・ドン・シャンと音を鳴らす、「鼓鈸三通(くはつさんつう)」という儀式があるのも特徴。こちらは、亡くなった人が仏の世界へ旅立つことを盛大に表現しています。
●お葬式マナー
焼香は3回。1回目は押しいただき、2回目はおしいただきません。線香は1本を香炉の中央に立てて供えます。
●見分け方
釈迦牟尼仏を表す梵字「バク」や「空」が戒名の先頭に入る場合があります。仏壇では中央に釈迦牟尼仏をお祀りしますが、阿弥陀如来や観音菩薩の場合もあります。その右側には宗派の開祖である道元禅師の掛け軸、左側には蛍山禅師の掛け軸が飾られます。
日蓮宗
鎌倉時代に日蓮聖人によって開かれた宗派。開祖の名前がそのまま宗派名になっています。拠りどころとなる「法華経」はお釈迦さまが晩年に説かれた経典で、〈生きとし生けるものすべてに仏心があり、仏を信じることで、どんな人でも仏から手を差し伸べてもらえる〉と教えています。
本尊は「大曼荼羅(だいまんだら)」。お題目は「南無妙法蓮華経(なむみょうほうれんげきょう)」です。この題目を唱えるとこで、自分のなかにある仏心を呼び表せると信じられています。
また、今を生きることを大切にし、来世での幸せより、現在の暮らしに重きをおく教え。経典である法華経には、〈今をいきいきと生きる智慧(ちえ)〉が集約されていると考えられています。
●お葬式の特徴
お葬式は、故人が穏やかにこの世を離れ、霊山浄土へ向かうための儀式。お題目の「南無妙法蓮華経」を参列者全員で唱えて旅立たせます。また、戒名ではなく「法号」を授かり、「鳴り物」と呼ばれる法具をたくさん使うのも特徴のひとつです。
●お葬式マナー
焼香は3回で、3回とも押しいただきます。線香は1本か3本。1本の場合は香炉の中央に立て、3本では手前に1本、奥に2本を香炉に立てて供えます。
●見分け方
法号には「日」という字を入れ、男性は「法」、女性は「妙」という字が使われています。また、頭の部分に「妙法」が使われていれば日蓮宗だと考えて間違いありません。
仏壇は関東と関西で飾り方が異なります。関東では本尊の大曼荼羅の右側に大黒天、左側に鬼子母神を、関西はその逆の位置で飾られます。また、大曼荼羅の掛け軸の前には、開祖である日蓮聖人の木像が置かれる場合も多いようです。
宗派がわからないときはどうすればいい?
同じ仏教でも、宗派によって死後の考え方が異なります。お葬式のしきたりだけでなく、戒名(法名・法号)や仏壇、お墓の仕様まで影響するので、自身の宗派は把握しておきたいもの。「わからない!」となったときは、こちらでご紹介する方法をお試しください。
菩提寺に確認する
先祖代々のお墓があったり、お葬式や法要がある場合に読経をお願いする僧侶がいたり、仏事全般のお願いをする寺院を菩提寺といいます。菩提寺がある場合は、そちらに確認すれば確実にわかります。宗派を確認することは失礼にあたりませんので、遠慮なく連絡してください。あわせて、お葬式のお願いをしておくといいでしょう。
親戚に聞く
宗教・宗派はご先祖から受け継がれている場合がほとんど。宗派がわからないときは、年配の親戚に尋ねるといいでしょう。故人が母親の場合、母方と父方のどちらの親戚に聞くのかを迷うかもしれませんが、仏壇やお墓を父親と同じにする場合は父方の親戚に問います。父親が母親の姓に変えているときは、母方の親戚に尋ねるといいでしょう。
親戚が宗派を知らなくても、菩提寺やお墓の場所を教えてもらえれば宗派を知る手がかりになります。
お墓を確認する
お墓の形状は宗派によって大きく異なりません。しかし、刻まれている文字に宗派の特徴があります。例えば、浄土宗の場合は戒名の前に「誉」を入れたり、「南無阿弥陀仏」や「倶会一処」という文字を刻んだりもします。また、戒名や法号にも宗派で違いがあるため、刻まれているものを確認してみるといいでしょう。見分け方は前述のとおりです。
また、菩提寺ではなく霊園にお墓を立てているケースもあります。管理運営している会社が宗派を把握していることもあるので、確認してみてもいいでしょう。
仏壇を確認する
仏壇は宗派に合わせた仕様になっています。とくに本尊と、両脇に飾る脇侍(わきじ・きょうじ)は宗派のしきたりにそって祀ります。前述した宗派ごとの見分け方を参考にし、確認してみましょう。
また、仏壇は、漆と金箔で装飾している「金仏壇」と木目を活かした「唐木仏壇」に大きくわかれます。浄土真宗(本願寺派・大谷派)は金仏壇、そのほかの宗派は唐木仏壇を使用するので宗派を見分けるヒントになります。
無宗教のお葬式をする
どうしても宗派がわからないときは、無宗教のお葬式で故人を見送るのもひとつの手段。日常で宗教を意識する機会が減っている現代では、あえて無宗教のお葬式を選ぶご家族も増えています。無宗教葬は宗教儀式を行わないため宗派を確認する必要がなく、自由なお葬式を営めるのもメリットです。
とはいえ、〈故人の戒名を授けてもらえない〉などトラブルにつながる恐れもあります。また、親族からの理解が得られない場合もあるので、事前に相談して同意を得ておくようにしましょう。