お葬式コラム

最近人気の樹木葬。メリットやデメリットを教えて!

お葬式など故人の弔い方が多様化している現代。ご遺骨を納める場所も、さまざまなスタイルが登場しています。そのなかで、人気を集めているのが「樹木葬」。文字通り、樹木などの周囲にご遺骨を埋葬する方法です。
〈自然に還る〉とされる樹木葬は美しいイメージをもたれがちですが、メリットだけでなくデメリットもあります。また、歴史の浅い埋葬方法なので周囲からの理解が得られず、トラブルにつながる恐れも…。自分らしい埋葬方法を安心してお選びいただけるよう、今回は樹木葬について詳しくご紹介します。

樹木葬とは。魅力や歴史を教えて!

「樹木葬」は墓石の代わりに樹木や花をシンボルとし、その下や周囲にご遺骨を埋葬する自然葬の一種。「樹木墓地」「樹木葬墓地」とも呼ばれます。墓標となるシンボルツリーには桜や紅葉、ハナミズキなどの樹木が植えられるケースが多いようです。
ただし、樹木があるところなら〈どこでもOK?〉というわけではありません。日本には「墓地、埋葬等に関する法律」があり、許可のないところにご遺骨を埋葬するのは禁止されています。そのため、自然のなかで眠るとされる樹木葬であっても、墓地として認められた場所でないと納骨できないのです。

樹木葬の魅力

その魅力はなんといっても、自然環境にご遺骨を納められること。〈自然のなかで眠りたい〉〈大地に還りたい〉など、自然志向な人から支持を得ている埋葬方法です。
また、お墓と違って代々受け継いでいく必要のない「永代供養」が多いため、お墓の継承者がいない人にも適しています。さらに、樹木葬は墓石を購入する必要がありません。一般的な墓地にお墓を建てるより、費用を抑えられるのも大きな特長でしょう。

樹木葬の歴史

樹木葬は新しいスタイルだと思われがちです。しかし、昔の日本ではご遺体を土に埋める土葬が一般的でした。火葬したお骨を埋葬する樹木葬と土葬は異なりますが、自然葬という意味では昔ながらの埋葬方法だといえるのではないでしょうか。
今のような樹木葬が日本で認められたのは1999年。岩手県・一関市にある祥雲寺(現在の知勝院)が申請した「樹木葬公園墓地」が許可されたことではじまったといわれています。人気の高まりを受けて近年は日本各地に樹木葬を行える墓地が増えていますが、現代的な樹木葬の歴史はそう長くはないのです。

樹木葬と散骨の違い

自然に還る埋葬には「散骨」というスタイルもあります。こちらも自然葬の一種なので樹木葬と混同されがちですが、樹木葬と散骨は異なる埋葬方法です。
樹木葬のやり方は、ご遺骨を納める「埋葬」。そのため、墓地として許可された場所でしか行えません。一方の散骨は、ご遺骨を粉末状にした遺灰を海や山などに〈まく〉スタイル。埋葬にあたらないため、〈節度をもってまくこと〉を条件に墓地として認められていない場所でも行えます。とはいえ、自由に散骨していいわけではありません。陸地であれば、散骨したい場所の土地所有者への許可が当然必要。海洋散骨にしても、陸地から離れた海域や人のいない沿岸で行うのがルールです。

樹木葬の種類。大きく3つにわかれます。

近年は樹木葬を取り扱う寺院や霊園が増えてきました。それにともない〈花に囲まれる〉〈ペットといっしょに眠れる〉など特徴的なものも登場し、多様な種類が存在します。しかし樹木葬全体で見ると、大きくは3つの形式にわかれます。

庭園型

限られたスペースにシンボルツリーや草花を植え、庭園のように整備されているタイプ。落ち着いた日本庭園風、優美なイングリッシュガーデン風など、さまざまな空間演出が施されており、美しく開放的な雰囲気が特徴です。きちんと手入れされた庭園のような見た目なので、「ガーデン墓地」「ガーデニング霊園」とも呼ばれます。
寺院や霊園の一画を利用していることが多いため都市部でよくみられ、アクセスしやすくお墓参りに行くのも便利。都会型の樹木葬ともいえるでしょう。そのため、ほかの形式と比べて価格は高くなってしまうようです。

公園型

広い敷地に樹木や草花を植え、芝生を敷いて公園のように設えているのが特徴です。園内は区画整理されており、従来の墓地ように納骨場所も明確なところが多いようです。墓石のない霊園だと考えるとわかりやすいでしょう。現在の樹木葬墓地でもっとも多いといわれているのが、このタイプです。
広い敷地を要するため郊外にあるところがほとんどで、整備されながらも自然の景色が楽しめるのが魅力。シンボルツリーのほかに噴水やベンチなどを設置し、散歩やピクニックを楽しみながらお墓参りができるところもあるそうです。

里山型

墓地として使用する許可を得た里山に、ご遺骨を埋葬する方法です。1999年に誕生した現代の樹木葬は、こちらの里山型からはじまりました。 シンボルツリーは新たに植える場合と、もともと自生していた樹木を利用するケースがあり、自然と密接した場所に納骨できるので〈自然のなかで眠る〉という樹木葬の魅力をもっとも感じられる埋葬方法だといえます。
都市部から離れた山林を利用しているところが大半なので、どうしてもほかの形式より交通の便は落ちます。また、火事防止のために火気厳禁としているケースが多く、ろうそくや線香のお供えができないこともあるのでご注意ください。

ご遺骨はどう納めるの? 樹木葬の埋葬方法。

樹木葬は自然葬の一種なので、納骨は〈土に埋める〉ことをイメージされるかもしれません。しかし、埋めて自然に還す以外にも骨壺を指定の場所に納める方法もあります。さらに、個別か、共同か、などの違いもあるので、詳しくご説明しましょう。

ご遺骨を自然に還すか、骨壺で残すか

樹木葬での納骨は、2つの方法がとられます。ひとつは、自然に還す埋葬。ご遺骨を小さく砕き、〈そのまま〉もしくはさらしの布袋や素焼きの陶器など〈自然に還るものに入れて〉埋葬する方式です。ご遺骨は時間とともに土に還り、樹木の養分となって新しい自然の生命へと循環。美しい自然のサイクルと一体化できますが、納骨してしまうとご遺骨は取り出せません。こちらは里山型の樹木葬に多いようです。
また、近年に増えている公園型では、納骨できるスペース(カロート)が設置されていることが多いようです。その場合は、ご遺骨を〈骨壺に入れたまま〉指定の場所に納骨。ご遺骨は土に還らず残るので、あとから改葬したくなれば取り出すことができます。

個別の埋葬か、共同での埋葬か

樹木葬では、ご遺骨を個別に扱う埋葬と共同で納める埋葬があります。必要な費用も大きく変わるので、考慮して選びましょう。
〈合祀・合葬タイプ〉
ほかの方のご遺骨といっしょに埋葬する方法。何人かのご遺骨を細かく砕いてまとめ、シンボルツリーの周囲に直接もしくは土に還りやすい容器に入れて埋葬されることが多いようです。故人のご遺骨は他の方のものといっしょになっているため、あとから個別に取り出すことはできません。埋葬している場所の特定もむずかしいでしょう。
このタイプは個別のスペースが必要なく、シンボルツリーも共有です。そのため、樹木葬のなかでもっとも安い料金設定になっています。
〈共同タイプ〉
合祀と同様に、一本のシンボルツリーの下にほかの方といっしょに埋葬されます。ですが、地下の共同スペースは区画でわけられているためご遺骨が混ざりません。骨壺で納骨できている場合はご遺骨が残るので、あとから取り出すことも可能。ただし、共同タイプでも一定期間が過ぎれば合祀へ移されるケースがほとんどです。期間は霊園によって異なるので確認しておくといいでしょう。
料金面では合祀・合葬より高めではあるものの、個別タイプと比べるとかなり安価。〈費用は抑えたいけど知らない人のご遺骨と混ざりたくない〉という方に適しています。
〈個別タイプ〉
合祀や共同とは違い、契約者ごとに区画を設けて個別に埋葬する方法。従来のお墓のイメージに近く、墓石ではなくシンボルツリーが植えられているのが特徴です。大きなシンボルツリーの下に個別の区画をつくって埋葬するタイプもあるので、好みの形態を選ぶといいでしょう。個別に植木する場合は、好みの木を選ぶこともできるそう。また、区画に入れる人数も1人だけでなく家族単位など〈数名でもOK〉のところがあり、わかりやすく区切られているためお墓参りがしやすいメリットもあります。
難点は料金が高額になること。個別のスペースが必要になるこちらのタイプの相場は50万〜80万ともいわれ、管理費もほかのタイプより高くなります。とはいえ、墓石を購入するお墓と比べれば費用は安く抑えられるでしょう。
また、個別タイプでも一定期間が過ぎれば合祀へ移されるのが一般的。契約する前には、期間を忘れずに確認しておいてください。

ここが魅力! 樹木葬のメリット。

樹木葬は、〈自然のなかで眠れる〉ことで心理的満足と環境的満足が得られる埋葬方法。そのほかにもメリットはたくさんあり、現代のお墓における課題解決にもつながる魅力を秘めています。

継承者を必要とせず、周囲に負担をかけない

一般的なお墓は、一族で代々継承していきます。ご先祖のご遺骨を安置する場所を次世代が受け継いでいくのは大切な供養文化なのですが、少子化が進む現代では〈お墓の継承者がいない〉〈お墓が遠方にあって管理できない〉といった問題も生じています。
その点、樹木を墓標とする樹木葬は受け継ぐ墓石がなく、ほとんどが「永代供養」。木々の管理や故人の供養も運営している霊園・寺院が行ってくれるので安心です。また、永代供養は一定期間が過ぎれば合祀されるため、先々の不安も解消できます。周囲に負担をかけない埋葬方法であることは、樹木葬の大きなメリットです。

お金の負担が軽くなる

墓石は高額なため、購入するとかなりの負担になります。さらに墓地の使用料も加えると100万円〜300万円程度が必要だともいわれています。
樹木葬は、選ぶ種類や埋葬方法によって料金は変動しますが、ほかの方のご遺骨といっしょに埋葬する合祀タイプであれば10万円弱からあり、一番高い個別タイプでも100万円程度。樹木葬としての一般的な相場は50万円だとされているので、従来のお墓を建てるケースと比べると費用はかなり抑えられます。さらに、運営する霊園に支払う永代使用料や管理費も一般的な墓地より低く設定されている場合が多く、コストを軽減できます。

宗教・宗派を問わない

従来のお墓は、宗教・宗派の習わしにそって納骨します。基本的に宗教・宗派の違うお墓には納骨できませんし、寺院によっては檀家にならないとお墓を建てられないなど条件がある場合もあります。
それに対して、樹木葬は宗教・宗派との関連がない埋葬です。寺院のなかにある樹木葬墓地でも〈宗教不問〉としているところが多く、檀家になる条件設定もされていないようです。また、宗教のしきたりに従わなくてもいいので、納骨式などの儀式を執り行わなくても問題ありません。宗教・宗派にとらわれず、自由なカタチで死後の眠りにつきたい。そう考える方からも樹木葬は支持されているようです。

ペットなど、家族以外ともいっしょに眠れる

日本の法律では、同じお墓に入る人やそれを継承する人に対する規定はありません。誰といっしょにお墓に入っても、基本的にはかまわないのです。とはいえ、通常は〈家族単位〉だと考えられています。また、お墓への納骨は墓地管理者からの許可を要し、寺院や霊園によっては〈同じ墓地に入れるのは○○親等まで〉と規定を設けているところもあるようです。
樹木葬は新しいスタイルなので、埋葬する人数においても自由度が高くなっています。運営する寺院・霊園によって規定は異なり、1人〜人数制限がないところまでさまざま。ご家族はもちろん、婚姻関係のないパートナーや友人、ペットといっしょに埋葬してもらえる樹木葬もあるようです。各所さまざまなプランを用意しているので、希望がかなえられるところを探すといいでしょう。

ここに注意! 樹木葬のデメリット。

たくさんのメリットがある樹木葬でも、デメリットは存在します。よい点だけを見て判断すると、〈こんなはずではなかった…〉と後悔する恐れもあります。デメリットもしっかり把握して、満足のいく選択をしましょう。

埋葬後にご遺骨を取り出せない場合がある

樹木葬の納骨は、粉砕したご遺骨を土に還るよう埋葬するやり方と、骨壺に入れてカロートに安置する方法があります。骨壺で安置するとご遺骨はそのまま残り、改葬を希望したときなどあとから取り出せます。しかし、自然に還るよう土に埋葬した場合は、ご遺骨は取り出せません。また、合祀タイプの埋葬を選んでしまうと、ほかの人のご遺骨といっしょになっているため、特定のご遺骨だけをピックアップするのは不可能。改葬の可能性がある人には樹木葬は不向きです。

周囲の理解を得られないかもしれない

現代的な樹木葬が登場したのは1999年。まだまだ歴史の浅い埋葬スタイルなので、伝統を重んじた供養を好むタイプの人には受け入れがたいかもしれません。
あかの他人であれば放っておけばいいのですが、親族となれば話は別。関係がこじれるとよろしくないので、〈なぜ樹木葬にしたいのか〉〈樹木葬にすることで得られるメリット〉などを丁寧に説明して理解を求めましょう。また、本人が生前に樹木葬を申し込んだ場合でも事前に周囲の人々へ伝えておき、埋葬後にご家族が責められないよう配慮しておくのをおすすめします。

交通アクセスが悪いところも多い

都市部に多い庭園型の樹木葬を取り扱う寺院・霊園は立地がよく、交通アクセスは悪くありません。しかし、より自然環境に近い公園型や里山型は郊外にあることが多く、とくに里山型は駅からかなり離れた場所にあるなど行きにくい場所に設けられている場合があります。
アクセスが悪いと、残されたご家族がお参りにいくときに不便。また、山道を歩く必要がある場所だと年配者にかなりの負担がかかり、お参りを断念してしまう結果につながります。

一般的なお参りができないケースもある

樹木葬は自然のなかに故人のお骨を埋葬します。既存の自然と共存するカタチをとるので、周囲の環境に影響を与えたり、イメージを壊したりする行為は禁じられています。例えば、ろうそくや線香などの火気は山火事などにつながる恐れがあるため、ほとんどの寺院・霊園では厳禁。故人が生前に好んでいた食べ物や飲み物、お花などのお供えも場所によってはできない可能性があるのも知っておきましょう。
また、具体的な埋葬場所の特定がむずかしい樹木葬では、お参りの対象がわかりにくいといったデメリットもあります。たいていは参拝スペースや供物台が設けてあるのですが、それらは共有スペース。お盆などお墓参りシーズンでは、ゆっくり手を合わせる時間が取れないケースもあるようです。

季節によって印象がガラリと変わることも…

四季がある日本では、自然は季節によって見せてくれる景色を変えます。そのことは自然の大きな魅力のひとつなのですが、〈春や夏にイキイキと茂っていた木々が秋には散ってしまい、さみしい雰囲気になってしまった〉〈雪が積もってお参りに行けない〉という声も聞きます。
ホームページやパンフレットにある写真は、自然が美しい季節に一番いい角度で撮影したものがほとんどです。購入を決める前に、現地に足を運んでリアルな状況を見ておくのが大切。可能であれば、季節ごとに出向いて実際の目でチェックするのがおすすめです。季節ごとの見学がむずかしい場合は、それぞれのシーズンの景色を写真で見せてもらい確認しておきましょう。

佐々木 昌明ささき まさあき

佐々木 昌明ささき まさあき

葬祭現場にて実務経験を重ねた後、館長として25年以上の経験から儀式、法要など多岐にわたり終活や自分史をテーマにしたセミナー講師やパネルディスカッション等多くの活動を行う。
また、東日本大地震の際には現地へ赴き、被災地支援にも携わる。
●保有資格
・葬祭ディレクター技能審査制度(厚生労働省認定)
1級葬祭ディレクター
・一般財団法人冠婚葬祭文化振興財団認定 
上級グリーフケア士

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