お葬式コラム

墓じまいをしたい! 具体的にどうすればいい?

先祖代々のお墓は、故人のご遺骨を埋葬する場所。供養の拠り所としても大切な役割を果たしています。しかし、少子高齢化が進む現代では、〈お墓が遠くにある〉〈世話をする人がいない〉などの理由で継承がむずかしくなっているご家庭が増えているようです。
そこで検討されるのが「墓じまい」。今あるお墓を解体して撤去することですが、簡単にできるわけではありません。今回のコラムでは、墓じまいについての基礎知識から具体的な手順、必要な費用までを詳しくご説明します。

そもそも墓じまいとは? 改葬との違いもご紹介!

以前は、先祖代々のお墓は子孫が受け継いで守っていくのが当たり前でした。しかし、少子高齢化が進み、単身者も増えている現代では、お墓の維持・管理は大きな課題。結果、「墓じまい」を選択されるケースが増加しているようです。
墓じまいは漢字で、「墓終い」「墓仕舞い」と書きます。字の通り、お墓を片づけて終わりにするということ。今存在している墓石を解体して撤去し、墓地を寺院や霊園などに返還する行為をさすのです。
この墓じまいという言葉の登場はそう古くありません。2010年に霊園・墓石を取り扱う会社が改葬サービスの名称として使用し、それがマスコミに取り上げられたことから世間に普及。その後、サービス名という枠を超えて使われるようになったといわれています。もちろん、それまでも墓じまいと同様のものはありました。当時は「墓処分」など別の名称で呼ばれていたようです。

墓じまいと改葬の違い。

墓じまいが改葬サービスの名称として登場したと前述しましたが、実は墓じまいと改葬には意味合いに違いがあります。 墓じまいが〈お墓の撤去・墓地の返還〉なのに対し、改葬は〈お墓の移転〉。現状のお墓からご遺骨を取り出し、新しい場所へ納骨することをさします。ご遺骨の供養する場所を移すことなので、〈お墓の引っ越し〉と例えられたりもします。 とはいえ、墓じまいをして取り出したご遺骨は、納骨堂など永代供養のある墓地に納めなおされたり、最近多くの方に認知されてきた海洋散骨や樹木葬をされる場合がほとんど。そのため、墓じまいと改葬は同じものとして捉えられる傾向があるようです。

墓じまいの決定権は誰? 墓じまいをしないとどうなるの?

ところで、墓じまいの決定は誰が行うのでしょうか。基本的にはお墓を継承された人、つまり年間管理費などを払ってお墓の権利をもっている人ということになります。
先祖代々のお墓は、ご家庭のなかで受け継がれていくものです。日本では一家の祭祀を取り仕切る権利をもっている人を「祭祀承継者」と呼び、祭祀財産である「系譜」「祭具」「墳墓」を引き継ぎます。祭祀承継者の選出は被相続人(前・祭祀承継者)からの指定や慣習に従って決められ、一般的には一家の当主にあたる人がなるケースが多いようです。
祭祀承継者は祭祀財産を引き継いでいるため、「墳墓=お墓」の管理・維持を担っているお墓の所有者でもあります。所有者である以上はお墓を処分することも可能なので、独断で墓じまいを決定しても問題はありません。とはいえ、勝手な判断はトラブルにつながる恐れがあります。墓じまいを選ぶ前に親族など周囲の人としっかり話し合い、承諾を得たうえで進めましょう。

墓じまいをしないと、どうなるの?

〈お墓が遠方にあって通えない〉〈継承する人がいない〉などの理由から、放置されてしまったお墓はどうなるのでしょうか。
例えば、民間の墓地にお墓が建っている場合は年間の管理費が必要になります。お墓を放置し、こちらの支払いを怠ると督促状が届きます。それでも無視をつづけると、「無縁仏」として強制撤去されることもあるそう。実際は、管理費を滞納したところですぐに撤去されることはないようですが、長らく音沙汰がないと無縁仏と判断されたり、督促を無視したことで訴えられたりするケースもみられます。ちなみに、撤去されたお墓のご遺骨は無縁仏として扱われ、ほかの方のお骨といっしょに埋葬される「合祀」が一般的です。
公営の墓地の場合、お墓を放置したからといって強制的に撤去されることはほとんどありません。しかし、公営墓地の管理は税金でまかなわれており、撤去されないからといって放置しておくのは問題です。民間、公営を問わずお墓の維持・管理がむずかしくなったら墓じまいをし、墓地を返還するのが望ましいのではないでしょうか。

墓じまいの流れ。どういう手順で進めればいい?

墓じまいには、必要となる手続きや作業がいくつもあります。全体の流れを把握ぜずに見切り発車をきってしまうと、ムダな手間や時間がかかったり、費用が高くなってしまったりすることにもつながります。
こちらで一般的な手順を紹介するので、全体の流れを把握してください。おおよその流れを知ったうえで準備をはじめると、墓じまいがスムーズに行えます。

1.親族と話し合う

祭祀承継者が引き継いだとはいえ、先祖代々のお墓はそのお家のものだと考えられる傾向にあります。また、親族のなかでもお墓に対する考え方はそれぞれ。供養の拠り所となるお墓がなくなってしまうことに納得できない、という方がいるかもしれません。
墓じまいの検討をはじめたら、まず親族と話し合って意見に耳を傾けましょう。互いの意見を尊重したうえで話し合いを行い、同意を得ておくと後々のトラブルにつながりません。このとき、費用の負担や墓じまい後のご遺骨の行き先なども相談しておくと実行がスムーズです。
墓じまいができるのは、基本的にお墓の使用者。祭祀承継者でない人が墓じまいをする場合は、祭祀承継者の承諾が必須です。同意を得えられたら「承諾書」に署名捺印してもらい、文書にしておきましょう。

2.墓地の管理者に相談・連絡する

墓じまいでは、現在のお墓が建っている「墓地の管理者」からも承諾を得ておく必要があります。 檀家となっている菩提寺にお墓がある場合は、墓じまいを決める前に住職へ相談してください。というのも、お墓を撤去するということは檀家をやめる「離断」にもつながるため、菩提寺との関係を断たれる可能性があります。さらに、寺院から「離檀料」を請求され、トラブルになってしまうケースも…。寺院にあるお墓の墓じまいを検討している場合は事前に住職へ相談し、助言をいただきながら実行するといいでしょう。
民間霊園にお墓がある場合は、その霊園の管理事務所に墓じまいをしたい旨を伝えます。公営の墓地なら、管理事務所や自治体の役所に連絡するといいでしょう。複数人が納骨されている共同墓地の場合でも墓地管理委員会はあるはずなので、そちらに一報を入れて進めていきます。

3.ご遺骨の行き先を決める

墓じまいをすると、納めていたご遺骨は取り出されます。このご遺骨を、どのようにするのかも墓じまいの重要な要素。ご家族など関係者とじっくり話し合いながら、適切な選択をしてください。
近年は埋葬方法が多様化してきたため、ご遺骨の供養には多くの選択肢があります。墓じまいでご遺骨を取り出して再び納骨する場合は、樹木葬や納骨堂など永代供養ができる施設が好まれているようです。この場合は改葬にあたるので、ご遺骨を納めるための「受入証明書」が必要。証明書は、新しい受け入れ先となる墓地の施設から発行してもらえます。
また、改葬以外にも、〈散骨する〉〈手元供養する〉などの方法があり、納骨しないという選択も可能。多様な埋葬方法はインターネットなどで調べられ、今のお墓がある寺院や霊園で相談に乗ってもらえることも多いようです。
墓じまいの費用は、取り出したご遺骨の行き先によって大きくかわります。予算を考慮しつつ、供養しやすい方法を選ぶとよいでしょう。

4.墓石の解体業者に依頼する

墓じまいでは、墓石を解体して撤去しなければなりません。大きな墓石を動かすのは大変な作業。個人では不可能なので、業者を探して依頼しましょう。
基本的に墓石の解体は、石材店や墓石解体の専門業者が担います。探し方はさまざまで、インターネットなどで検索しても多くの業者が見つかります。もともとのお墓を建てた石材店に依頼してもいいでしょう。また、民営の墓地や寺院では、指定業者に依頼しなくてはならない場合もあります。墓じまいの相談をしたときに、解体業者についても確認しておくといいでしょう。
公営の墓地など指定業者がない場合は、自身で探して選びます。セレクトのポイントは、すぐに決めてしまわないこと。墓石の解体は安価ではありません。サービス内容や料金体系は業者によって異なっているので、必ず複数の業者をピックアップして詳しく確認。比較検討し、納得のいく業者をお選びください。

5.行政の手続きをする

ご遺骨を納める場所を移転する「改葬」の場合、行政への手続きが必須です。書類をそろえて、現在あるお墓を管轄している自治体へ申請しましょう。自治体によって必要書類が異なることもあるので、事前の確認をおすすめします。 手続きの一般的な流れはこちらです。
(1)「改葬許可申請書」を入手する
墓地のある地域の役所・役場から入手し、必要事項を記入します。申請書は、一体のご遺骨につき1枚必要です。役所の窓口のほか、自治体のホームページからも入手が可能なので、ダウンロードして使用してもいいでしょう。
(2)「埋葬許可書」を入手する
ご遺骨がこの場所に埋葬されている、ということを証明する書類です。現在のお墓がある墓地の管理者から発行してもらえます。わざわざ書類を用意せずとも「改葬許可申請書」に管理者が署名・捺印すればOK、という自治体もあるようです。
(3)「受入証明書」を入手する
新しい納骨先の施設から、ご遺骨の受け入れを証明する書類を発行してもらいます。こちらも「埋葬許可書」と同様に「改葬許可申請書」への記入でOKになるケースもあるので、自治体に確認するといいでしょう。
(4)必要であれば「改葬承諾書」を入手する
墓じまい(改葬)の申請者と墓地の名義人(祭祀承継者)が異なる場合は、墓地の名義人からの承諾書が必要です。承諾書のテンプレートが自治体のホームページで配布されているので、便利に活用するといいでしょう。
(5)必要種類を自治体へ提出し、「改葬許可証」を手に入れる
「改葬許可申請書」などの必要書類をそろえたら、管轄自治体の役所・役場へ提出します。窓口で、提出する人の身分証明書の提示を求められることがあるので持参しておくといいでしょう。
提出した書類に問題がなければ、ご遺骨の移転を認める「改葬許可証」が発行されます。即時発行ができない可能性もあるので、時間に余裕をもって行ってください。発行された「改葬許可証」は、新しい納骨先の管理者に提出します。紛失しないよう、大切に保管してください。

6.閉眼供養をしてご遺骨を取り出す

墓石を解体する前に、大切なご遺骨を取り出します。日本では、「改葬許可証」がないとお墓からご遺骨を取り出せません。許可証の入手は、先に済ませておいてください。
お墓のご遺骨は、カロートと呼ばれる石室に納められています。重い石を動かすため、実際の取り出しは石材店や代行サービスが行うのが通常。取り出したご遺骨は、ご家族が現地に引き取りに行く、もしくは業者から新しい納骨先へ送ってもらいます。
また、ご遺骨は「閉眼供養」を行ってから取り出すのが一般的。こちらは〈今眠っているお墓から故人の魂を抜いてもらう儀式〉で、「魂抜き」「お性根抜き」とも呼ばれます。儀式では僧侶に読経していただくので、菩提寺へお願いします。菩提寺がない場合は、現在のお墓がある霊園に相談するといいでしょう。
閉眼供養はお骨を取り出す日まで済ませておけば問題ないため、当日に行わなくてもかまいせん。一週間前くらいを目処に行うご家庭が多いようです。

7.墓石を解体して墓地を返還

依頼している業者が、墓石を解体する作業を実施。不要になった墓石は、業者が引き取ってくれます。作業時にご家族が立ち会う必要はありませんが、希望すれば可能です。ご先祖さまの魂を宿していた大切なお墓に感謝の気持ちをもちつつ、解体を見届けてもいいでしょう。
作業では、上モノの墓石だけでなく土のなかの基礎も解体して撤去。更地にして、寺院や霊園など墓地の管理者に返還します。このとき、返還に必要な手続きもします。墓地の使用開始時に発行された「墓地使用許可証」を持参しておくと、スムーズに手続きできるでしょう。

8.ご遺骨を運び、新しい供養先へ納骨する

お墓から取り出したご遺骨を、新しい供養先まで運びます。長期間お墓で眠っていたご遺骨は壊れやすいので、運搬には細心の注意が必要。自家用車やタクシーを使い、慎重に運ぶといいでしょう。電車やバスなど公共交通機関を利用するときは、周囲の乗客に配慮して運んでください。飛行機の場合は、各航空会社のルールに従って機内に持ち込みます。ご遺骨を持ち運ぶ用の専用バッグが発売されているので、活用してみるのも一案です。
新しい供養先にご遺骨を運んだら、「改葬許可証」を提出して納骨。そのまえに、故人の魂をその場所に宿してもらう儀式「開眼供養」を営むことも多いようです。開眼供養では僧侶に読経いただくので、前のお墓から魂を抜く閉眼供養とともに菩提寺にお願いするといいでしょう。

代行サービスにも依頼できる

お墓を撤去して更地に戻し、管理者に返却するのが墓じまい。実行するためにはさまざまな手続きや作業が必要で、個人で手配していくとなると手間と時間がかかってしまいます。日々忙しくされている方には、大きな負担となってしまうでしょう。
現在は、代わりに墓じまいを行ってくれる代行サービスを扱う業者も多く存在します。「お墓からの出骨」「墓石の解体」「新しい供養先への納骨」「各種手続き」などが依頼できるため、サポートをお願いすれば手間なく墓じまいができるでしょう。

墓じまいの費用。どれくらい必要?

墓じまいには、それなりのコストがかかります。お墓の規模や営む儀式、改葬先のランクなどによって料金は変化しますが、一般的に必要なものと、その相場をご紹介するので目安にしてみてください。

墓石の解体・撤去費用

墓石の解体・撤去に必要な費用は、墓地1平方メートルあたり10万〜15万円程度。敷地の広さや墓石の大きさなどお墓の規模によって変動し、特殊な状況であれば料金が上乗せされるようです。さらに、ご遺骨の取り出しや発送を依頼すると、別途料金が必要になることもあります。トラブルを防ぐため、必ず事前に数社から見積もりを取って納得できる内容と金額の業者に依頼しましょう。

閉眼供養のお布施

閉眼供養で僧侶にお渡しするお布施は、3万〜5万円が相場。とはいえ、金額が明確に決まっているものではありません。相場は、寺院や地域によっても変化します。迷ったときは年配の親族など地域の風習に詳しい人に聞いたり、お願いする寺院に質問したりするといいでしょう。

離檀料

檀家となっていた寺院のお墓をしまうと、檀家からも離れる結果につながります。この「離断」をするときには、これまで供養していただいた感謝の気持ちをお布施というカタチにしてお渡しするのが一般的。強制ではありませんが、長い期間お世話になってきたお礼として用意するといいでしょう。
離檀時のお布施の金額は、3万〜20万円程度だといわれています。相場を見てもわかるように、離檀料は宗派や寺院によって大きく変動します。金額の判断に迷ったときは、離檀する菩提寺に確認してみるのも一案です。寺院によっては、相場を教えてくれたりします。

新しい納骨先への費用

ご遺骨を新しく納めるための費用も必要です。料金は納骨する施設によって大きく変わり、3万程度から100万円以上の高額になるケースもあるようです。料金をなるべく抑えたいときは、ほかの方のご遺骨といっしょに埋葬する合祀、納骨先を必要としない海洋散骨や自宅での手元供養という方法を選べば安価で供養できます。
納骨時に開眼供養をする場合は、僧侶へのお布施を用意します。相場は閉眼供養と同等の3万〜5万円。あいさつ時や帰り際にお渡しするといいでしょう。

必要書類の手数料

改葬許可証など、墓じまいに必要な書類の入手に手数料が発生する自治体もあります。ほとんどが数百円程度。墓じまいの手続きは現在のお墓が建っている地域で行うので、管轄自治体のホームページなどでチェックしておきましょう。

佐々木 昌明ささき まさあき

佐々木 昌明ささき まさあき

葬祭現場にて実務経験を重ねた後、館長として25年以上の経験から儀式、法要など多岐にわたり終活や自分史をテーマにしたセミナー講師やパネルディスカッション等多くの活動を行う。
また、東日本大地震の際には現地へ赴き、被災地支援にも携わる。
●保有資格
・葬祭ディレクター技能審査制度(厚生労働省認定)
1級葬祭ディレクター
・一般財団法人冠婚葬祭文化振興財団認定 
上級グリーフケア士

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