お葬式が終わったあとにする、いろいろなこと。
お葬式コラム
会葬御礼や香典返しなどの返礼品。どんなものが喜ばれるの?
お葬式を執り行うときは、「会葬御礼」や「香典返し」を準備しなくてはいけません。これらは参列者へお礼として渡す「返礼品」で、それぞれに意味や適した商品があります。多くの葬儀社はオプションサービスとして多様な品物を用意しているので、手配をお願いするといいでしょう。
葬儀社に依頼できるとはいえ、喪主は商品を選ぶ必要があります。あれこれ悩まず準備できるよう、選び方やおすすめアイテムをご紹介します。
会葬御礼と香典返し。違うものなの?
近年は家族葬などの小規模な式が増えたことから、お葬式に参列する機会が減少しているといわれています。参列者として「会葬御礼」や「香典返し」を手にする経験も減っているため、この2つを同じものだと勘違いしている人もいるようです。
会葬御礼も香典返しも、お葬式のときに喪主など主催側からのお礼として参列者に渡す「返礼品」。しかし、同じものではなく、違う意味をもっています。
会葬御礼は、会葬のお礼
「会葬御礼」とは、会葬・参列のお礼のこと。忙しいなかお葬式に足を運んでいただいた方へ感謝の気持ちを込めて贈る品物や礼状をさし、香典の有無に関わらず参列いただいたすべての人に当日お渡しします。
また、会葬御礼は、〈会葬・参列へのお礼を返す〉という意味で「会葬返礼品」、〈故人を供養していただいたお礼〉ということで「粗供養品」ともいわれます。粗供養はお葬式だけでなく法要への参列のお礼としても用いられ、とくに中部や西日本の地域でよく使われているそうです。
さらに、「会葬」の意味は〈葬儀・告別式に参列すること〉。細かくいうと、通夜式で使えません。そのため…
●通夜返礼品:通夜式に参列いただいた方へのお礼。
●会葬御礼、会葬返礼品:葬儀・告別式に参列いただいた方へのお礼。
にわけられるのです。ちなみに、通夜返礼品は「通夜ぶるまい」でおもてなしすれば不要とする考え方もあります。一般的には、通夜ぶるまいへの出席・欠席に関わらずすべての参列者にお渡ししているようです。
このように厳密にいえば通夜式と葬儀・告別式でわかれますが、どちらも〈会葬・参列のお礼〉という意味合いは同じ。そのため、近年は「返礼品」としてひとくくりに捉える傾向があるようです。
香典返しは香典のお礼
香典返しは、文字どおり香典へのお礼。霊前に供える香典をいただいた方に、あいさつ状とともに品物をお返しする習わしです。また、関西では香典返しのことを「満中陰志(まんちゅういんし)」といいますが、これには四十九日法要が終わったことをお知らせし、そのタイミングでお礼を伝えるという意味があります。
満中陰志という言葉からもわかるように、香典返しは四十九日法要を終えて〈忌明け〉したタイミングで行う「あと返し」が通常でした。しかし、近年はお葬式当日にお渡しする「即日返し」が増加。決まった品を用意するだけでよいため、手間を省けるのが大きなメリットです。近年はさらに簡略化し、会葬御礼・通夜返礼品も香典返しとしてまとめてお渡しするケースもあるそう。ただし、高額な香典をいただいた方には、即日返しに加え、後日に金額に見合った商品を選んで贈るのがマナー。こちらも四十九日法要後に発送すればいいでしょう。
会葬御礼・通夜返礼品の相場や選び方。
会葬御礼は会葬・参列のお礼として渡すものなので、喪主などお葬式の主催側が用意します。では、どのように準備すればいいのでしょうか?
品物はどのように手配するの?
会葬御礼や通夜返礼品として渡す品物や礼状は、葬儀社にお願いすれば用意してもらえます。近年は必要な物品やサービスをセットにしたプランが各葬儀社にあり、ほとんどの場合は喪主のあいさつを記した会葬礼状はセットに含まれています。返礼の品物は、追加オプションとして準備してもらえるのでお葬式を担当する葬儀社に相談するといいでしょう。
葬儀社のラインアップにない商品を返礼品にしたいときは、喪主やご家族で手配する必要があります。お渡しする人数を想定し、それよりも多めに用意して当日に慌てないよう備えてください。
相場はどれくらい?
会葬御礼や通夜返礼品に高額な品物は必要ありません。一個500円〜1,500円を目安に好みのものを選べばいいでしょう。
ただし、返礼品の金額はお葬式の規模や地域の風習によって変動します。規模が大きく豪華な式では、2,000円以上の返礼品をお渡しするケースもあるようです。悩んでしまったときは、葬儀社の担当者や過去にお葬式を行ったことのある経験者への相談をおすすめします。
適したアイテムの選び方は?
アイテム選びに決まりごとはなく、基本的にはどのようなものを選んでも差し障りがありません。選び方のポイントは、〈もらってこまらないもの〉〈日持ちがするもの〉〈持ち帰りやすいもの〉など、贈る相手に負担がかからないものをチョイスすること。さらに、弔事の返礼品は〈消えもの〉が適しているといわれます。
これは〈不祝儀を残さない〉という意味が込められており、昔からよしとされています。消えものとは、食料品や日用品などの使うとなくなる消耗品。おすすめの品物を次章で詳しく紹介するので、ご参照ください。
対して、避けたほうが無難なのは〈重たいもの〉〈サイズが大きいもの〉〈日持ちのしないもの〉〈高額なもの〉など。慶事をイメージさせる〈お酒類〉や〈昆布類〉も不適切だと考える人がいるので注意しましょう。
とはいえ、これらすべてがNGだというわけではありません。喪主やご家族が希望するなら、返礼品にしても問題ないとされています。
品物にそえるものはあるの?
返礼品では品物とともに礼状をお渡しするのが通常です。喪主・親族一同からのお礼とし、〈故人の名前〉や〈喪主の名前〉、〈お礼の言葉〉などを記しましょう。葬儀社など依頼する業者にはテンプレートの文面が用意されているので、活用しつつオリジナルの要素を加えるといいでしょう。
また、会葬御礼や通夜返礼品には、お塩を小さな袋に入れた「お清めの塩」がそえられていたりもします。こちらは〈身体に塩をまくことで穢れをとる〉という神道の儀式を習慣化したもの。仏教では死を穢れとしないので基本的に必要とせず、近年は返礼品にそえるケースも減っているようです。
会葬御礼・通夜返礼品におすすめのアイテム。
会葬御礼や通夜返礼品のアイテムは、軽くて持ち帰りやすいなど受け取った人への配慮が大切。また、不祝儀を残さない消えものも適しているといわれています。具体的なおすすめをいくつかご紹介しましょう。
緑茶や紅茶、コーヒー
おいしく飲んで消費できるお茶やコーヒーは、返礼の品物として人気の高い消えもの。日持ちがして、軽く持ち運べるのも魅力です。生前にコーヒーを愛飲していた人ならコーヒーを贈ることで故人を偲べ、お茶の時間を楽しんでいた人であれば紅茶と菓子をセットにしたものが喜ばれるでしょう。
また、緑茶は僧侶によって広められたともいわれ、仏教や神道とも縁の深い飲み物。献茶というお茶をお供えする儀式もあるため、返礼品にはうってつけのアイテムだといえます。
お菓子
菓子も食べるとなくなる消えものです。クッキーやマドレーヌなどの洋菓子は日持ちがし、見栄えもよいことから返礼品の定番になっています。せんべいやおかき、かりんとうなどの和菓子も人気です。故人の好みで選び、〈故人が生前に好きだった菓子です〉とメッセージをそえてお渡しすると喜ばれるのではないでしょうか。消費しやすいよう、個包装や小分けになっているタイプがおすすめです。
避けたいのは、生菓子。日持ちがせず、持ち運びにくいのも難点です。同様の理由で果物も不向き。故人がフルーツを好きだった場合は、ゼリーを贈るといいでしょう。
タオルやハンカチ
タオルやハンカチのセットも返礼品によく用いられます。食べたり飲んだりして消化するものではありませんが、どちらも日常で使う〈消耗品〉。消えものと考えて差し障りないのです。
また、タオルやハンカチには〈悲しみをぬぐい去る〉〈悲しみを包み込む〉といった意味も込められているそう。昔は故人に着せる白装束にちなんで参列者にさらしを贈る風習があったため、さらしの代わりにタオルなど布製品を返礼品にするようになったともいわれています。
洗剤や石鹸
暮らしのなかで役立つ日用品・生活雑貨は、いくつあってもこまらないもの。なかでも洗剤や石鹸は毎日使う消えものであり、菓子やタオル類のように贈る人の好みも反映されません。汎用性の高い返礼品として根強い人気があります。
さらに洗剤や石鹸は汚れを落とすもの。〈悲しみをきれいに洗い流す〉という意味が込められ、大切な人を亡くした悲しみを乗り越えていくご家族の想いも伝えられます。
注意点は大きさと重さ。液体洗剤などはかなり重量があります。ものによってはサイズも大きくなるので、遠方から来る人や年配の人が多い場合は避けたほうがいいかもしれません。
香典返しの相場や選び方。
会葬御礼と同様に、香典返しもお葬式の主催側が用意します。気になる相場や選び方をご紹介するので、参考にしてください。
香典返しはどのように手配する?
香典返しを「即日返し」にする風潮がある近年は、品物の手配も葬儀社に任せることが多いようです。葬儀社は香典返しに適したアイテムをリストアップしているので、そこから予算や好みにあわせて選べばいいでしょう。セレクトに迷っても、担当者からアドバイスが受けられ安心です。基本的に香典返しの手配はセットプランになく、追加オプションになります。手配料も含めた金額を確認したうえで、依頼しましょう。
四十九日法要後に「あと返し」するパターンや、高額な香典をいただいた方へ追加で香典返しを贈るときは、喪主やご家族が自ら手配することもあります。好みの商品をデパートやネット通販などで購入して発送するのが一般的で、香典返し用のかけ紙や礼状の添付も対応してもらえます。もちろん、葬儀社でもあと返しの依頼は受け付けています。お葬式後でも問題ないのでご相談ください。
香典返しの相場はどれくらい?
香典返しで贈る品物の価格は、いただいた香典金額の3分の1から半額というのが相場です。香典返しではよく「半返し」という言葉が使われますが、これは〈香典の半分の金額の品物をお返しする〉というもの。よくいわれているからといって、必ず半額でなければならないというわけではありません。目安として考え、〈半分を基準として3分の1程度までを含める〉ことを半返しと表現する向きもあります。
近年主流の即日返しでは、準備する段階で香典の金額がわかりません。そのため、いただく金額を5,000円〜1万円だと想定し、2,500円〜3,000円程度の品物を用意するのが通常です。想定は1万円までなので、それ以上の香典をいただいた人には追加でお礼をするのが礼儀。香典金額から1万円を引いた差額分の、3分の1から半額程度の商品を四十九日法要後に贈るといいでしょう。例えば、2万円の香典なら3,000円〜5,000円程度が目安です。
ただし、かなり高額な香典をいただいた場合は、3分の1以下でもかまいません。香典返しの金額は最大で1万5,000円程度だといわれています。こちらを上限にして品物を選ぶといいでしょう。
適した品物の選び方は?
香典返しの品物は、どのようなものを選んでも基本的にOK。会葬御礼と同様に〈消えもの〉が適しているといわれますが、それ以外のものを贈っても問題ありません。〈生前に故人が好んでいたもの〉などを基準にセレクトしてもいいでしょう。最近は弔事への考え方が柔軟になってきたこともあり、万人向けの定番品を一律に選ぶのではなく、受け取る人の個性にあわせた品物をそれぞれチョイスする人もいるようです。
とはいえ、避けたほうがいいとされるものもあります。四つ足生臭ものと表現される〈肉や魚〉、慶事をイメージさせる〈昆布やかつお節〉、祝いの席で飲むことの多い〈お酒類〉もふさわしくありません。さらに、赤色と白色の組み合わせや松竹梅の模様など、おめでたいデザインのアイテムもタブーです。近年増えている当日返しの場合は、持ち帰りやすさに配慮してコンパクトで軽いものを選びましょう。
礼状やかけ紙はどうする?
香典返しをあと返しするなら、品物に礼状をそえましょう。内容には、〈参列や香典のお礼〉や〈無事に四十九日法要を終えた報告〉、〈香典返しを贈る知らせ〉などを盛り込みます。テンプレートの文面を活用すると便利です。
当日返しの場合は、お礼を直接伝えられるので礼状がなくても問題ありませんが、用意したほうがより丁寧な印象を与えられます。
また、品物には「かけ紙」も必要です。かけ紙には種類があり、水引の色や表書きなどは宗教・宗派や地域によって異なります。菩提寺の僧侶や年配の親族など、詳しい人に確認しておくといいでしょう。地域の風習を理解している葬儀社への相談もおすすめです。
香典返しにおすすめのアイテム。
香典返しにも〈消えもの〉が適しています。「お茶やコーヒー」「お菓子」「タオルやハンカチ」といった会葬御礼で紹介した品物は、香典返しにもぴったり。商品ランクを上げるなどして、予算に見合ったセットを選ぶといいでしょう。
このほか、香典返しにおすすめのアイテムをピックアップしてご紹介します。
カタログギフト
受け取った人が自分で商品を選べるカタログギフトは香典返しの定番。好みでないものを贈ってしまう心配がなく、贈る側も商品選びに頭を悩ませる必要がありません。カタログにはバラエティに富んだアイテムが掲載されており、選ぶ楽しさを与えられるのもメリットのひとつ。
最近は品物だけでなく、レストランでの食事や日帰り旅行など体験型のギフトもあるようです。また、通常はタブーだとされている肉や魚など生ものの食材もカタログギフト内で選ぶのであれば問題ありません。
海苔
昆布やかつお節は慶事をイメージさせるためNGですが、同じ海の乾物でも海苔は香典返しに適しています。海苔は多くのご家庭で日常的に食べられており、精進料理でもよく使われています。軽くて持ち運びしやすく、乾物なので日持ちがするところも人気の理由です。香典返しでは、自分では買わない高級品やお茶漬けやスープなど加工品と組み合わせたセットにすれば喜ばれるでしょう。
陶器や漆器
消えものではありませんが、陶器や漆器も香典返しに好まれています。その理由は、それぞれの特長と関連づけた意味合いにあるようです。例えば、陶器の原料は陶土と呼ばれる土。今のように火葬が普及していない時代、ご遺体は土葬されていました。〈人は亡くなると土に帰る〉という昔の埋葬方法にまつわり、陶器も香典返しに適しているといわれています。
一方の漆器は、漆を塗り重ねて仕上げます。そのことから、〈不幸を塗りつぶす〉〈二度と不幸がないように色直しする〉という意味が込められているのだとか。どちらもアイテムとしては、日常使いしやすい食器が人気だそうです。