お葬式が終わったあとにする、いろいろなこと。
お葬式コラム
実家の片づけが進まない! 親の遺品整理はどうすればいい?
お葬式後にやることにひとつに「遺品整理」があります。故人が使っていたものを片づけることですが、悲しみが癒えていないなか、大切な人の遺品を整理していくのはつらいもの。さらに親が亡くなった場合、実家に残る大量の物品たちを目の前にして、〈どうすればいいの…〉と 途方に暮れる方も少なくありません。
今回のコラムでは遺品整理をピックアップ。とくに悩む人が多い「実家の片づけ」について具体的にアドバイスします。
そもそも遺品とは。誰が整理するもの?
「遺品」とは、亡くなった人が残した物品のこと。家や車、貴金属など価値のあるものから使い古した日用品まで、〈故人が生前に所有していたすべてのもの〉が遺品にあたります。これら遺品たちを片づけ、整理するのが「遺品整理」です。
遺品整理は、故人の持ち物を片づけるのが大きな目的。しかし、それだけではありません。整理することで、故人が残したすべての財産(遺産)も把握できます。財産は財産分与や相続にも関わってくるため、すべて認識しておく必要があります。さらに、故人が使っていた物品の整理は、故人との思い出の整理にもつながります。遺品と向き合うことで残された人の気持ちにけじめがつき、故人との別れを受け入れられていくのです。
また、遺品と似た言葉に「形見」があります。こちらは故人が愛用していた装飾品や趣味の品など、〈故人が思い出され、残された人の拠りどころとなる物品〉のこと。遺品のなかでも思い入れの深いものが形見だと考えられています。
遺品整理は誰が行うの?
遺品整理は喪主がするものだと考えていませんか。故人が残した品々の片づけは、遺品を引き継ぐ権利がある〈相続人〉たちで担うのが基本。つまり、配偶者や子ども、親戚など、みんなで協力しながら行う必要があるのです。逆にいうと、相続の権利がない人は遺品に手をつける行為を認められていません。例えば、相続を放棄する人は遺品にふれてはいけないのです。 とはいえ、これは相続が決定するまでのこと。相続が決まれば、遺品は相続人の所有物になります。所有者の判断であれば、誰が片づけても問題ありません。
持ち家か? 賃貸か? 住居によってタイミングが変わる。
実家の遺品を整理するタイミングに明確な決まりごとはありません。基本的には、いつ行ってもかまわないのです。大きく関わってくるのが、住まいの状況。持ち家であれば急ぐ必要はありませんが、賃貸住宅には契約があります。契約期限を守れるタイミングで整理するようにしましょう。
持ち家の場合のタイミング
親族が集まる〈法要のあと〉は、遺品を整理する絶好の機会です。とくに忌明けする四十九日法要後は供養のひと区切り。気持ちも少し落ち着いてくるこの時期に、遺品整理をはじめる方は多いようです。持ち家の場合は急がなくてもいいので、一周忌のあとでもかまいません。
そのほか、〈さまざまな死後手続きを終えたとき〉や〈相続税の申告や納税の前〉など、葬式後にしなければならない事務手続きのスケジュールにあわせても効率的に進められます。
ゆっくり遺品整理を行いたいという方は、〈気持ちが落ち着いてから〉でもOK。故人との思い出がつまった品物を手にすると悲しみがぶり返してしまう恐れもあるので、無理せず、心が整ってから遺品整理をはじめるといいでしょう。
賃貸の場合のタイミング
賃貸住宅は、毎月の家賃が発生します。また、契約内容によっては借り主が死亡したときの退去期限が決まっているケースもあります。そのため、〈お葬式後すぐ〉に遺産整理をはじめる人が多いようです。忙しくて葬式後すぐに手をつけられない場合は、家主・管理会社と連絡をとり、遺品整理のスケジュールや退去日について相談して許可を得ておきましょう。
また、〈四十九日法要後〉も遺品整理のタイミング。それまでの家賃を払いつづけなくてはいけませんが、四十九日を過ぎると故人の魂はあの世へと無事に旅立ち供養が一段落します。ご家族の心身も落ち着いてくることから、賃貸の場合でもこの時期を選ぶ方がいるようです。
自分でするか、業者に頼むか。遺品整理の方法のメリット・デメリット。
ご実家の遺品整理のやり方は大きくわけて2つ、〈ご自身で行う〉もしくは〈業者に頼む〉。どちらにもメリットとデメリットがあるので、ご家族で話し合ってお決めください。
ご自身で遺品整理をする
亡くなった親が住んでいた実家が持ち家だったり、賃貸であってもほかの誰かが住みつづけるなど片づけを急いでいなかったりする場合は、ご家族など相続する人たち自身で遺品を整理することが多いようです。
判断基準は、〈遺品整理ができる期間〉〈作業する人員〉〈遺品の量〉など。遺品整理に時間がかけられなかったり、手分けして作業するご家族が少なかったりすると肉体的にも精神的にも大きな負担がかかります。
どんな人でも大量の生活用品とともに暮らしています。とくに親世代はもったいない精神が浸透し、ものを溜め込む傾向にありました。まずは実家の広さやそこに収納されている物品の量をざっと把握して、自分たちで整理できるかを決めましょう。
●メリット
・遺品整理のための費用が抑えられる。
・時間をかけて丁寧に遺品を整理できる。
・故人の思い出の品と向き合うことで気持ちの整理ができる。
・後悔しにくい……など。
●デメリット
・遺品整理の期間が長くなる。
・手間がかかり、肉体的・精神的に負担がかかる。
・遺品処分の判断に迷ってしまう。
・故人を思い出し、悲しみが増してしまうこともある ……など。
専門業者に依頼する
近年は遺品整理を専門とする会社が増えています。故人が賃貸住宅に住んでいたなら遺品整理に時間がかけられません。さらに、遺品を整理する人の住まいとご実家が離れている場合は頻繁に通うのも困難でしょう。〈遺品整理ができる期間〉〈作業する人員〉〈遺品の量〉などで判断し、無理だと感じたら専門業者に頼むのも一案です。
遺品整理の専門業者はたくさんあるため、どこがいいのか迷ってしまうこともあります。信頼できる会社を選ぶポイントは、〈遺品整理士が在籍している〉〈訪問して明確な見積もりをだしてくれる〉〈希望のサービスをしてくれる〉など。必ず数社から見積もりをとり、料金の安さだけにとらわれずサービス内容を比較検討して信頼できるところへ依頼します。
葬儀社が紹介してくれる場合もあるので、お葬式を担当した葬儀社に相談してみてもいいでしょう。
●メリット
・多くの作業を任せられる。
・短期間で実家の片づけができる。
・専門家のアドバイスを受けながら遺品を整理できる。
・不用品の処分なども請け負ってくれる ……など。
●デメリット
・遺品整理の費用が高くなる。
・故人の思い出の品とゆっくり向き合えない。
・自分でやらなかったことを後悔してしまう。
・業者とトラブルになってしまうこともある ……など。
自分で遺品整理をしたい! まずは準備からはじめて。
喪主をはじめとしたご家族での遺品整理は大変な作業。想像以上に手間も時間もかかります。しかし、しっかり準備をしておけば効率性はグンとアップします。遺品整理をはじめる前にやっておくべき準備をご紹介するので、参考にしてください。
遺言書やエンディングノートがないか確認する
遺品は相続にも関わります。それに、もともとは故人の所有物。故人の想いも尊重されるべきです。遺品整理では、まず故人の意思を表示した遺言書や考えをつづったエンディングノートを探しましょう。遺言書があった場合は、それが有効なものであるのかも確認。たとえ法的に効力のない遺言書であっても、故人の気持ちに違いありません。尊重されることをおすすめします。
また、遺言書は勝手に開封してはいけません。偽造や変更を防ぐため、〈家庭裁判所において相続人などの立会いのもとで開封しなければならない〉と法律で定められているからです。
遺言書が見つかった場合は未開封のまま家庭裁判所へ提出し、必ず検認してもらいましょう。勝手に開封すると、罰金を科せられる恐れがあるのでご注意ください。
すべての相続人の同意を得ておく
遺品整理は、遺品を相続する人が担当するもの。すべての相続人で行うのが理想です。とはいえ、遠方に住んでいたり、仕事が忙しかったりして全員そろうのは簡単ではありません。協力できる数人で作業するのが現実です。
また、故人が残した品々への想いも、人それぞれです。ある人には無意味なものでも、ある人にとっては価値のあるものだったりします。後々のトラブルにならないよう、遺品整理をはじめる前にすべての相続人へ連絡。遺品整理のやり方やスケジュール、処分の基準などを説明して同意を得ておきましょう。
下見して現状を確認する
遺品整理を業者へ依頼した場合、担当者が現場に足を運んで現状を確認します。そうしないと正確な作業量がわからず、見積もりを立てられないからです。
ご家族で遺品整理をする場合でも、現状確認はとても重要。自身が遺品整理をする業者の視点をもって、客観的に実家の現状を観察してみましょう。部屋の数や大きさ、収納されている服や道具の量、家具など大物がいつあるのかも数えておくといいでしょう。
ざっくりであっても現状を知ると、的確な判断ができます。〈どれくらいの時間がかかるか〉〈人手は何人くらいほしいか〉など想定していきましょう。自分たちではむずかしいと感じたら、専門業者への依頼を検討してみるのもひとつの方法です。
スケジュールを立てる
実家の現状が把握できたら、スケジュールを立てていきます。厳密なものではなく、おおよその目安でかまいません。稼働できる日や人数などを考慮して割り出し、カレンダーなどに書き出していくと、スケジュールの見える化もできます。
遺品整理では大量の物品を片づける必要があるので、だらだらと行っていては終わりが見えてこず作業する人の心身が消耗します。時間を区切ったスケジュールがあれば作業の指針となり、〈この日までに、ここまで終わらせる〉というモチベーションにもつながります。とはいえ、無理なスケジュールは禁物。作業できる日にも限りがあり、状況によって予定を変更することもよくあるので、余裕のある日程を設定しましょう。
●スケジュール作成時に考慮するポイント
・作業ができる日時や集まれる人数
・この日までに完了したいという目標
・片づける場所の順番と内容
・地域のゴミ収集日とゴミ収集センターの場所と営業日 ……など。
仕分けた遺品を保管する場所を決める
遺品整理では、〈残すもの〉〈捨てるもの〉〈保留するもの〉などに仕分けていきます。捨てるものもすぐに処分できるわけではないので一時的に保管しておく必要があり、残すと決めたものも引取先などをあとで相談しなければならない場合もあります。
遺品整理の準備として、仕分け後の物品を保管する場所をあらかじめ決めておくと作業がスムーズ。例えば、ひとつの部屋を保管場所にあて、それぞれの一時保管スペースを決めておくと〈仕分ける→運ぶ→保管する〉が効率よく行なえます。同じグループの物品を一箇所にまとめると見える化もでき、〈やっぱり、捨てるor捨てない〉というあとからの判断がしやすくなるのもメリット。貴重品や重要書類などは、〈誰がどこに管理するのか〉を関係者と相談して決め、責任者が保管。事前に確認と承認を得ておけば、後々のトラブルにつながりません。
遺品を整理するための道具をそろえる
遺品整理のほとんどは部屋の片づけです。年末の大掃除をイメージし、作業しやすい服装で行いましょう。また、ものを仕分けたり、処分したりするための道具なども必要。事前にそろえておくとテキパキと作業できます。
●作業するために準備しておきたいもの
・軍手
・マスク
・スリッパ
・ごみ袋
・ダンボール
・ガムテープ
・カッターやはさみ
・ロープやビニールテープ
・油性ペン
・ドライバーやペンチ
・手押しの台車 ……など。
遺品整理のやり方。どうすればスムーズに進められる?
準備を終えると、いよいよ遺品整理がスタート。事前に決めたスケジュールにそって進めましょう。だだし、やみくもに行うのはNG。効率よく整理するための、おすすめの方法をご紹介します。
貴重品や重要書類などを探す
遺品整理で最初に行ってほしいのが、貴重品や重要書類など財産(遺産)の探索。金銭的に価値のある財産は、相続にも関わってきます。遺産相続は死亡日または相続開始を知った日から3ヶ月以内に手続きをする必要があるので、優先的に探しましょう。
また、遺産には借金などマイナスの遺産があり、相続を放棄する場合も3ヶ月以内に手続きしなければいけません。プラス遺産とマイナス遺産は早めに見つけだし、すべてを把握することが重要。あわせて、健康保険証やクレジットカードなども探して必要な手続きを行います。
●貴重品や重要書類の例
・現金
・預金通帳
・有価証券
・不動産などの権利関係書類
・契約書類
・クレジットカードやキャッシュカード
・マイナンバーカードやパスポートなどの身分証明書
・印鑑や印鑑証明
・健康保険証
・年金手帳
・公共料金の請求書や領収書
・貴金属や美術品など高い価値をもつもの …など。
貴重品や重要書類などを探す
財産や書類を探して必要な手続きをとったあとは、残りの遺品を仕分けます。まずは故人の形見となるものや、思い出の品など残すものを決めましょう。とくに故人の日記や手紙などは処分に悩みます。仕分ける段階では保留にしておき、あとから捨てるか・捨てないかを判断してもかまいません。家電や食器、衣類などご家族で使えそうなものも選別し、残しておきましょう。
●形見となるものや思い出の品の例
・衣類やアクセサリー、時計などの装飾品
・骨董品など趣味の品
・写真やアルバム
・プレゼントしたものやされたもの
・旅行のお土産
・日記
・手紙 …など。
リサイクル・売れるものを選ぶ
残さないと決めたものでも、使える品はたくさんあるはずです。まだまだ使えるものを処分するのはもったいないし、環境にもよくありません。ご家族で使わなくても誰かが使ってくれるので、再利用の道を考えましょう。
リサイクル業者に買い取ってもらう、フリマアプリやネットオークションなどで売ってみるなど、近年はさまざまな方法があります。フリマアプリでは、〈こんなものも売れるの?〉という商品も取り引きされているので似た商品を検索し、出品できそうならチャレンジしてみてください。
●リサイクルや売れる商品の例
・冷蔵庫やテレビなどの大型家電
・パソコンやスマートフォンなどの小型家電
・ベッドやタンスなどの家具
・靴や衣類などのファッション
・香水やコスメ用品
・趣味でコレクションしていたもの
・本や布、古紙
・使っていない食器やタオルなどの日用品
・鍋や釜などの金属(銅・アルミ・ステンレスなど) …など。
処分するものを分別する
使わない不用品のなかで、リサイクルできないものは処分します。実家のある自治体のゴミ処分方法に従って分別し、ルールを必ず守って捨ててください。
コツは、仕分け時にゴミを分別しておくこと。燃えるゴミなど小さな不用品は指定されたゴミの日にすぐに捨て、粗大ごみなどの大きな不用品はまとめておいて一気に処分すると効率よく捨てられます。
また、 いざ捨てるとなると、〈捨ててしまうのは惜しいかも…〉と考えてしまいがち。悩んだときは〈保留分〉としてとりあえず残しておき、少し時間をおいて決めてもいいでしょう。事前にご家族と相談し、〈迷ったら、残す〉〈迷ったら、捨てる〉という基準を設けておくと判断しやすくなります。
●ゴミ分別の例
・燃えるゴミ
・燃えないゴミ
・資源ゴミ
・粗大ゴミ
・リサイクル家電 …など。
自治体によってはゴミとしてだせないものも定められています。必ず公式サイトなどで事前確認し、正しく処分してください。